「こころの声を聴くー河合隼雄対話集」

わたしといふ現象は
仮定された有機交流電燈の
ひとつの青い照明です
(あらゆる透明な幽霊の複合体)
風景やみんなといっしょに
せはしくせはしく明滅しながら
いかにもたしかにともりつづける
因果交流電燈の
ひとつの青い照明です       「春と修羅 序」宮沢賢治より


私というのは、ひとつの現象だと思っている。
確かにしっかりと存在しているのではなく
あやふやに仮定された現象ーそしてそれは、わたしのとりあえずの物語。

そう思ってたら「免疫の意味論」を書いた免疫学者・多田富雄と河合隼雄の対論を読んで、驚いた。          「こころの声を聴くー河合隼雄対話集」より


「私は女性というのは存在だと思いますけども、どうも男というのは現象にすぎないんじゃないかとこのごろ思いだしてきているんです。」

「もともと人間は女であって、なんとかして男という役割分担を作るという目的だけでY染色体というのが働くんです」

なんでも、もともと性ホルモンは女性ホルモンの形で作られるそうで、ほっとけばみんな女性になっちゃうんだけど、Y染色体のほうから、女性ホルモンを男性にホルモンに変えるような指令が出るのだという。それで、男性になるんだと。無理やり男性にさせられているから、男にだけ起きる病気があるのだという。

「男は女にとって異物なんです。ところが男にとって女は異物じゃないんです。というのは、X染色体というのは両方とも持っていますから、X染色体で作られるものに対しては、自己だと両方とも思っているわけです。ところがY染色体というのは男だけしか持っておりませんから、男性の臓器を女性に移植しますと、男性と女性の違いだけで拒絶反応が起こることがあるんです。・・・ですから男性の細胞を女性に移植すると拒絶反応が起こるんですけど、女性の細胞を男性に移植してもそれはセルフだと思ってしまうんです。」

男は無理して男になるのである。発生のある特定の時期に男性ホルモンが働かなければ、たいてい女になってしまうというのだ。


なるほどなぁ~とこれを読んで思ったのだ。男はどこか無理してるんだと思う。無理して威張ったり、虚勢張ったり、意地はったり、それで闘ったりして男は男らしく見せようと思っているのではないか。強い男という役割を演じようとしているのではないか。それに対して、本質的に自然のままに存在しているのは、女で、だから女はいざという時に強いのだと思う。

そして、今の時代はいい意味でも悪い意味でも、男がいなくなってきている気がする。無理して虚勢を張る馬鹿は、必要ないのだけれど、女性が求めている男の役割すら演じられない男が多いような気もする。そう、最近は女性の方が元気で、「荒野をめざす」ような男があまりいないのもなんだか寂しい気もする。

免疫学的にDNAですべて最初から決まっているのではなく、実際、体というのは「かなりファジーなやり方で、条件次第で反応していて、その方が危機管理としてはうまくいっている」のだそうだ。自己というのが、遺伝子的に決定されているのではなく、どこまでが自己でどこまでが非自己なのかわからなくなるような曖昧さをもっている。

自分の境界なんて、案外あいまいなのだ。だからこそ、人との関わりで、変わったり、変容したり、自分と相手との境目がわからなくなったりするのだ。


それで、冒頭の宮沢賢治だが、彼は森羅万象、動物や自然や山や石や風や宇宙などあらゆるものと交感できる感性を持っていたような気がするのだ。そういうところに、僕はとても惹かれるのだ。

(こ)
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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