「アムリタ」吉本ばなな

今さらながら 吉本ばななの「アムリタ」を読む。

僕の場合、いろんなめぐりあわせで 読む本とか、見る映画とかが
ある。自分が、読もうと思ったり、見ようと思ったりするものは勿論
あるのだが、近くにいる人や好きな人、関心のある人が、たまたま
読んでたからとか、薦められたからとか、そういうキッカケで出会う
ものは結構多い。それは、出会うタイミングなのかなぁ~なんて
勝手に思ったりする。そういう風にして、たまたま出会ったものが
つながっていくと感じることもある。

まぁ、人間は、物語が好きだからね~。

吉本ばななの本は、読めばきっと面白く、あたたかく、せつなく、
いとおしくなったりするんだろうなぁ~と分かっているのだが、
結構、読んでいないものも多い。
「アムリタ」は、オカルティックな部分があったので、ちょっと
避けていたような気がする。

何かが見える、何かがわかる、何かを感じる人、仕事柄そういう人たち
と接する機会は、これまでもいろいろあった。霊だったり、オーラだったり、
前世だったり、天使だったり・・・etc。僕自身、自分は何も感じ
ないだけに、実感としてはわからないのだが、きっと何かを感じる人に
は感じるんだろうなぁ~と思っている。それは、正しいこととか、
真実とか、運命とかではなく、スピリチュアルな感受性の鋭さみたいな
ものは、きっとある人にはあって、それが共振しあったり、
通じ合ったりすることは、あるんだと思う。それを、あえて言葉で置き換えると
嘘くさい、虚構の世界になってしまうんだけど。だから、テレビとかで
言葉にすると、やっぱりまがまがしくて、嘘くさくなる。

さて、「アムリタ」は、そういう感性の鋭い人たちが次々と出てくる。
それが、本当かどうかなどは、どうでもいいことだ。感じる人には
感じるし、わからない人にはわからない。ただ、誰もが「死」をおそれ
ているし、死んだしまい遠くに行ってしまった人たちのことを、生き
ている人間は、考え続ける。思い続ける。そして、この主人公・朔美は
頭を打って「半分死んでいる人間」と言われたりする。

この小説で面白いのは、人間は「いれもの」なんだという考え方だ。
朔美は、頭を打つことでこれまでの自分から「自由」になる。
過去の記憶をほとんど失い、アタラシク生まれ変わるかのように。
恋人、竜一郎は言う。

「君が、どんどん変化していくのを見ていると、人間っていうのは本当に、いれものなんだ、と思うんだ。いれものなだけで、中身はどうにでもなるって。別人にもなるんだって。・・・運命の成り行きで、君はつぎつぎ新しいものを中に入れていくけど、その変化するいれものにすぎない君という人間の底の底のほうに、なんだか「朔美」っていう感じのものがあって、たぶんそれが魂っていうものだと思うんだけど、それだけがなぜか変わらなくて、いつもそこにあって、全てを受け入れたり、楽しもうとしている。それは君が死ぬまでそこにあると思うと、何だかいじらしいような、苦しいような気がして、いてもたってもいられなくなるんだ」


そして、「水を飲む」ように、生きている些細ないろんなことを
日常のあらゆることを、いとおしむように生きることの美しさを
描いている。

「自分」という境界は、とてもいい加減で、曖昧で、勝手にいろんな
自分の「物語」を作って、人格を統一しようとしたりする。でも、
いろんな要素が混沌とあって、記憶なんか好きなように作り変えたり、
都合のいいように思い込んだり。そして、誰かを求めたり、誰かに
「何もできない」のに「何とかしよう」と思ったり、せつないほどに
その人の中に、入り込もうと必死になったりもする。


「何かしてやりたい。
どうして人は人に対してそう思うのだろう。何もしてやれないのに。
海が海であるだけで、よせてはかえし、時には荒れ、ただそこに息づいているだけで人にさまざまな感情を喚起させるみたいに、ただそこにいるだけの人として生きていきたい。がっかりさせたり、恐れさせたり、慰めたり。
でも、もっと何かしたい。そう思うことを止めることができない。」


だからこそ、人は いとおしくて せつない 存在なのだ。

美しい世界は、「一度しかなく、一瞬で終わる。でも自分がその一部に永遠に溶け込んでいる。ワンダフル、ブラボー!そういう瞬間を、人は苦しんでも求める」

(あ)
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
札幌でテレビの仕事をしている
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映画にまつわる雑文です。
2006年からの映画レビュー。
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