「ホテル・ニューハンプシャー」ジョン・アーヴィング

ジョン・アーヴィングの「ホテル・ニューハンプシャー」を
先日やっと読了。この物語も、次から次へと不幸が家族に訪れる。
ジョン・アーヴィングの物語は、あっけなく人が死んだり、事故に
あったり、いろんな劇的なことが次々と起こるのだけれども、
「あらゆるものは、おとぎ話だ」と小説の中で何度も繰り返されるように、
どこか夢のように全てが過ぎ去っていく。
その突然訪れる「悲しみ(ソロー)」は、漂い続けるのだが、人生は
いろんなものを抱えながら、それでも「前は前へと進み続けるのだ」
(「グレートギャツビー」)。痛みやコンプレックスや不幸や
悲しみをどの登場人物も抱え、少しずつ、そんな過去にケリをつけ、
熊の着ぐるみを脱ぎ捨てるように、進んでいく感じがカフカとは違う。

「しかし、わしらには、熊が必要なんだ。誰でもそうだ」
「夢を見続け、そしてぼくたちの夢はそれをありありと想像できるのと
同じくらい鮮やかに目の前から消え去る。好むと好まざるとによらず、
それが現実に起こることである。そしてそれが起こることであるから、
ぼくたちには、利口な熊が必要なのだ。」
(「ホテル・ニューハンプシャー」新潮文庫・中野圭二訳)

ここでいう「熊」とは、愛すべきパートナーであったり、幻想とか夢
だったり、心の中の信念だったり、強さだったり、家族だったり、
「共感空間」と呼べるような思いやりのある場所だったりする。

かつてレイプされ、自分が醜いと信じ、熊の着ぐるみを脱ぎ捨てられないスージーが、
主人公のジョンに「あたしに信じさせて」「あたし、
信じさせてもらう必要があるわ」と言う。

自分の存在をまるごと認めてくれる人を、人はいつも求めているのだ。
そして、その「熊」さえいれば、どんなことがあっても、人は
なんとか生きていけるのだ。「前へ前へと」

(ほ)
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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