「人生のちょっとした煩い」グレイス・ベイリー/村上春樹訳

グレイス・ベイリーの短編小説は、まず文章がとっつきにくい。なかなか頭にすんなり入ってこないのだ。村上春樹も訳すのに苦労したとあとがきでも書いているように、かなりクセのある文章を書く女性だ。キッチンテーブルで書かれた処女短編集。タイトルだけでも変わっている。「変更することの出来ない直径」だの「そのときみんな、私たちは一匹の猿になってしまった」だの、とても中味が想像できない。それでも切れ味鋭い文章が面白い。

女を口説く軽い色男としたたかな性をもつ若い女性という組み合わせの話が多かった。「さよならグッドラック」「若くても、若くなくても、女性というものは」「淡いピンクのロースト」、「コンテスト」、「変更ることの出来ない直径」。現実的なしたたかな女の感覚と何も考えずに行動する単純で哀れな男たち。未成年の少女の性とそれに翻弄される男の物語も面白い。

「そのときみんな、私たちは一匹の猿になってしまった」は、題名どおりとびきりシュールな話で面白い。科学オタクともいえる青年の狂気の世界に足を踏み入れるあやうい世界。

「そこに浮かぶ真実」は、謎めいている。車で暮らす謎の職業斡旋男やら、セックスが目的なのか仕事もないのに若い女を雇う謎の経営者。何一つ説明されないまま、物語が投げ出される。

とにかくなかなか読みにくい短編小説集だ。創造的でもないどこにでもいるちょっと変わった男や女が無造作にそこにいる。

「ある年のクリスマス、夫が私に箒をプレゼントしてくれた。ひどい話だ。」・・・で始まる「人生への関心」など、ググッとくる書き出しがあったり、とてもユニークな作家で、そんな日常のひとコマが、独特の文体で綴られている。

あてにならないフラフラする男や現実的に「ちょととした煩い」を抱えつつ生きていくしたたかな女、そんな男と女の違いを考えてみるには、いい小説かもしれない。

(し)
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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