『扉をたたく人』(The Visitor)

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『扉をたたく人』(The Visitor)を観る。
日本語の映画のタイトルって、ほとんどが商業主義がミエミエで、たいてい原題よりも悪くなる場合が多いのだけれど、この邦題はいい。原題の「The Visitor」よりもなんか映画のニュアンスが伝わってくる。トントンとノックする音が・・・。とても静かな映画だ。

映画もそんな音で始まる。入ってきたのはレポート提出が遅れた学生だったけど。厳格で融通のきかないウォルター大学教授(リチャ-ド・ジェンキンス)がまず描かれる。それからピアノ教師も自宅に現れる。強く叩くようにピアノを弾くウォルターに向かって、「指の間に電車を通すように」優しく弾くことを教えようとする。ウォルターは子供に教えるようなそんな言い方が気に入らない。ピアノ教師を次々と変えるプライドの高さが、ますますウォルター教授のつまらなさを映画は強調する。

そう、これは音の映画なのだ。心の扉を開くような音。硬く閉ざした心を、柔らかいタッチで、呼びかけるように叩く音がテーマなのだ。

大学教授がニューヨークで出会うシリア出身のタレクという青年もまた“ジャンベ”という楽器を叩き続ける。彼が教授にジャンベを教えるときも、もっと軽く力をいれずに叩くことを伝える。力を入れずに、優しく、柔らかく、叩くことを。

映画は、タレクと教授のドラマから後半は一転、教授とタレクの母とのドラマへ移行する。頑なで融通が利かなかった教授は、まるで9,11以降のアメリカそのもののようだ。アラブ系の移民への容赦ない排斥をアメリカは推し進める。シリア移民のタレフは国外追放になる。寛容さがなくなったアメリカは、再びウォルター教授のように変われるのだろうか?ウォルターが叫ぶ刑務所での問いかけは、自らへの問いでもあったのだ。拒絶することから受けいれることへ。

人はいくつになっても誰かからのノックで変わることが出来るのだ。優しい、柔らかい、語りかけるような、陽気なリズムの楽しいノックで。トントントン。
心の扉はいくつになっても開くことが出来る。心の扉を硬く閉ざすのも、柔らかく自在に開くのも自分次第だ。

ラストの地下鉄のホームで、一心不乱にジャンベを叩き続けるウォルター教授の姿が、なんとも痛ましく孤独でせつない。それは、タレフたちと一緒に公園で音を純粋に楽しんで叩き続けた笑顔と明らかに違うことを、私たちは知ってるからだ。

監督・脚本:トム・マッカーシー
キャスト:リチャード・ジェンキンス、ヒアム・アッバス、ハーズ・スレイマン、ダナイ・グリラ、マリアン・セルデス

☆☆☆☆4

(ト)
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テーマ : アメリカ映画
ジャンル : 映画

tag : 人生

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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