「私の中のあなた」ニック・カサヴェテス

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泣かせる映画は、あまり好きではない。だから病気モノというのは、あまり好きではない。なんだかズルいという気がしてしまうのだ。それに、泣ける映画がいい映画とも思わない。ほとんどの泣ける映画は、みんな泣きたいために映画を観に行っている。そこには、予定調和の涙しかない。予定調和の笑いがあるとの同じように。泣くために、泣かせるために作られる映画、映画の宣伝で「泣けました」とそれが感動的であったかのようにPRされる・・・そんな映画が大嫌いだ。

だから、泣くことを売り物にしている映画はあまり観たくない。そんな術中にまんまとハマりたくないし、そんな風な映画で泣きたくもない。たいていは、病気や運命づけられた「死」をモチーフに、その運命にあらがいながらも、前向きに生きようとしたり、死を迎える人々が描かれる。安っぽく「死」を扱う映画がイヤなのだ。

インディーズ映画の父、ジョン・カサヴェテスの息子、ニック・カサヴェテスのこの作品。僕は彼が父の脚本で撮った「シーズ・ソー・ラヴリー」は痛々しい愛を描いた傑作だと思っているが、実はほかにあまり観ていない。「きみに読む物語」も観てない。だから彼に才能があるかどうかはわからない。でもこの作品は、なかなかうまいと思った。しかし、妹のゾエ・カサヴェテスが撮った「ブロークン・イングリッシュ」は、凡庸な出来で、がっかりだったなぁ。



さてさて、それでこの映画。難病ものである。やたらと泣けてくる映画だ。泣かせる映画は、あまり好きでないと言いながらも、いい映画だった。泣かせようとするわざとらし意図があまり感じられない泣けてくる映画である。この映画は設定を考え付いた時点で、ほとんど成功していると思う。原作とは違うらしいのだが、とても巧い設定だと思う。そして、この映画は、子供たちが何よりも素晴らしい。スキンヘッドの白血病の少女・ケイト(ソフィア・ヴァジリーヴァ)がいい。妹のアナ(アビゲイル・ブレスリン)もいい。脇の大人たちも好演してて、せつない。

ちょっと気に入らなかったのが、ケイトが恋をするエピソードがややご都合主義的だったことか。妹の物語から姉の物語、そして恋物語、最期は母と姉の物語というように物語のテーマが次々と移っていくのだが、恋物語は唐突に始まり唐突に終わる。エピソード自体はとても感動的で、美しくダンスパーティーで着飾ったケイトのシーンは、やはり泣けてくるのだが、それでも全体の中で、家族をの物語を描くために奉仕するエピソードでしかなく、あれでは彼が可哀そうだ。

この映画の主題は、言うまでもなく母とケイトの物語だ。病気ととことん戦う母と静かに「死」を受け入れたいというケイト。現代医学が突き当たっている生きることとは何か?なんのために生き、なんのために「死」を乗り越え、生き続けるか?というとても今日的な主題が描かれている。それと当時に、誰のために戦ってるのか分らなくなってしまう家族の問題でもある。いつだって、人の「死」はその人の「死」でしかない。分身のようの思える家族であっても、娘の「生」と「死」は、娘のものであり、母(キャメロン・ディアス)の「生」と「死」ではない。人は他人の人生を生きられない。自分の人生しか生きられない。同じように、他人の死を死ねないのだから。「どう生きるか」は「どう死ぬか」でもある。そのことを決められるのは、その人でしかありえない。そんな母の迷いと混乱をうまく描いている。自分のために娘を「生かす」のではない。生きてるのは、ケイトであり、アナなのだ。だから母と娘が、お互いの心をさらしあった後に眠るシーンは美しい。ベッドでの上からの俯瞰ショットは見事な終わらせ方だった。

そして、「死」はただそれだけの意味しかない。そこに意味づけするのは、いつだって生きているものたちの物語。ラストの妹アナのナレーションがいい。「死」はただそれだけ。意味はない。そして、ケイトは、青空になった。

原題:My Sister's keeper
監督:ニック・カサヴェテス監督
出演:キャメロン・ディアス、アビゲイル・ブレスリン、アレック・ポールドウィン、ジェイソン・パトリック、ソフィア・ヴァジリーヴァ、トーマス・デッカー、ジョーン・キューザック、エヴァン・エリングソン、デヴィッド・ソーントン

☆☆☆☆4

(ワ)
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テーマ : アメリカ映画
ジャンル : 映画

tag : 家族

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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