「ここに幸あり」オタール・イオセリアーニ

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『素敵な歌と舟はゆく』『月曜日に乾杯!』などで世界的に高く評価される、グルジアの名匠オタール・イオセリアーニ監督の人間讃歌・・・だそうである。

まったくふざけた映画である。とぼけた映画とでも言おうか・・・。オタール・イオセリアーニのほかの作品を観ていないので、なんとも言えないけれど、変な映画を撮る監督さんである。ちょっとフランス喜劇映画の異才・ジャック・タチを思わせるとぼけ方である。

人生讃歌、スローライフ映画、人生の豊かさに気づく映画・・・う~~ん、まぁそうとも言えるけれど、そんな人間ドラマなんて全くない。だから大臣をクビになって、普通の人間に戻って、人生の豊かさに初めて気づいた・・・映画という感じでもない。

ダラダラと映画的緊張が一切ないままに、映画は始まる。棺おけ争奪の意味不明のやりとりやらアフリカのどこかの大臣とのセレモニー、銃と鳥のプレゼント交換。そして、大臣室でこっそりやっているトランプなどなど、もともとこの大臣はテキトーである。仕事へ意欲や緊張や責任などサラサラない。だから労働者たちのデモが起きて、自らの発言がもとでクビになったところで、ドラマなど起きない。失意や絶望など全く描かれない。買い物しまくりの愛人は、次の大臣にさっさと乗り換え、大臣室からの引越しが描かれる。さらに住む所がなくなって、転がり込もうとした母親のアパートにはアフリカ系移民が暮らしていたり・・・。だからといってそこで騒ぐでもナシ。激突のドラマもない。人々が当たり前のように暮らし、酒を飲み、音楽を楽しみ、路上に絵を描き、淡々とダラダラと映画は進行する。

このオヤジは、なぜか女にモテる。愛人にフラれ、元妻にも愛想つかされ、汚物をかけられ汚れても、女に「シャワーを浴びていきなさいよ」と部屋に呼ばれ、ローラースケートで楽しそうに滑っていて怪我をすると黒人女性が助けてくれ、最後はピアノの女性とまんまとよろしくやっている。女と遊び、友と酒を飲み酔っ払い、ギターやピアノなど音楽で騒ぎ、いつでも暢気で楽しそうなのだ。とても生真面目で仕事熱心な日本人には理解できない世界かもしれない。まぁ、それでもいいんじゃない?という映画なんだろうけれど、なんとも脱力系の映画だ。

名優ミッシェル・ピコリが、主人公の母親役なのもなんだかふざけている。どう見ても男が女装している変な母親なのだ。映画的な虚構の感動やドラマとは全く無縁の世界。役者を使わず素人を使うという監督は、かなり意図的にそういう映画的な虚構を排除しているのだろう。この作品とは別の映画を映画館で観てみないと、なかなか彼の映画の面白さは理解できないかもしれないなぁと思った。

最後に映画に出てきた女性ばかりが大集合するのは、どういう意味なのか?主人公ヴァンサンをみんなで語り合おうっていう訳か・・・。男はいつだって、女たちの周りをぐるぐる回っているということか・・・。


監督・脚本・出演:オタール・イオセリアーニ
撮影:ウィリアム・ルプシャンスキー

美術:マニュ・ド・ショヴィニ 音楽:ニコラ・ズラビシュヴィリ
出演:セヴラン・ブランシェ、ミシェル・ピコリ、ジャン・ドゥーシェ

原題:Jardins en Automne/2006年/フランス=イタリア=ロシア

人生を、ちょっとひと休み。
ある日突然失脚した大臣、ヴァンサン。

仕事とお金を失い、妻は愛想をつかし、住む家もなくなって……。
とはいえ気のあう仲間とワインを飲んで歌を歌えば、

この世はたのしい。
ほんとうの幸せは、いつだってすぐそばにある。

☆☆☆3
(コ)
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テーマ : ヨーロッパ映画
ジャンル : 映画

tag : 人生

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