「蛇にピアス」金原ひとみ

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映画化されたものは未見です。原作を今更ながら読みました。村上龍が『限りなく透明に近いブルー』と比較して自ら解説を書いていたが、確かにこの芥川賞を受賞したこの小説は、似ている。その衝撃性、その時代性、その風俗性、その過激性と話題性において。

身体的な痛みについての小説だ。痛みだけが生きていることと繋がっていく。その身体改造を伴う自虐的な攻撃性。SM的世界が展開され、舌にピアスや刺青というような身体的痛みが強調される。ヒリヒリしたその痛みを伴った若者たちのその身体感覚。この年代にしかかけなかった小説ともいえる。金原ひとみは、このような小説を二度と書くことはできないだろう。その後、彼女がどんな小説を書いているのか未読なので、よくわからないが、そんな気がする小説だ。

男2人と女1人の三角関係の基本パターン。所有という観念について語られる場面がある。

所有、というのはいい言葉だ。欲の多い私はすぐに物を所有したがる。でも所有というのは悲しい。手に入れるという事は、自分の物であるという事が当たり前になるという事。手に入れる前の興奮や欲求はもうそこにはない。・・・(略)・・・所有ってのは、案外厄介なものだ。でもやっぱり人は人間も物も所有したがる。全ての人間は皆MとSの要素を兼ね備えているんだろう。私の背中に舞う龍と麒麟は、もう私から離れることはない。(『蛇にピアス』P76 集英社文庫)

物語の中盤、不安な自分を抱えながら背中に彫る刺青の龍と麒麟に彼女は目を入れない。画龍点睛・・・自分の背中から龍や麒麟が飛び去っていかないように。それは、所有への欲望と安心・・・。逆に言えば、生きていることへの限りない怯えと不安・・・。

そんな彼女の願いもむなしく一緒に暮らしていたアマは死んでいなくなる。所有できることなど、何もないのだ。そんなことを感じながら、彼女ルイは背中の龍と麒麟の目を入れる。一緒にいる刺青師のシバへの疑いを抱えながら。背中の龍や麒麟は、いなくなるかもいしれないけれど、少し自分の中での決着があったのだろう。

そして、ラスト、舌に穴が開いた彼女は・・・
「私の中に川が出来たの」と言う。

所有欲と失うことへの不安はそこにない。そのすがすがしさが、この絶望的な自虐的な痛みを伴った歪んだ男女関係の果てで、救いのラストになっている。

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