「黒猫・白猫」エミール・クストリッツァ

536.jpg

ずーっと観たいと気になっていたエミール・クストリッツァの「黒猫・白猫」である。相変わらずのメチャクチャである。ハイテンションの馬鹿騒ぎ。祝宴のさなかの生と死、死と再生。動物たちとの競演。人生は素晴らしい。巨匠と呼ばれ数々の映画祭で受賞しているクストリッツァぐらい、ハイテンションでお祭り好きの監督はいない。カーニヴァル好きといえばフェデリコ・フェリーニだが、クストリッツァの映画は徹底して明るく騒がしく陽気であり、いつも音楽とともにあり、人生賛歌なのだ。

冒頭、いつものように双眼鏡の目線が登場。覗くことから映画は始まる。ドナウ川が舞台のこの映画、まずは船に乗って豪華な車が運ばれて来る。車と船、そして列車。移動=旅へのあくなき欲望がクストリッツァにはいつもある。車に乗って誰かがやってきて物語は始まり、ラストは何かに乗って去っていく。それは時にはトロッコだったりもする。この映画のラストは、冒頭の運ばれてきた豪華な車と豪華な船だった。彼の映画はいつも何か乗って、夢を乗せて旅に出るのだ。

川=水はこの映画では重要に役割を果たす。最初に買った洗濯機は川に落とし、間抜けな父親はずぶ濡れなり、油は水で騙される。アイスクリームを持って川を泳いで運んで、若い二人の恋をとりもち、病院からミュージシャンたちと逃げ出した爺さんは、「人生は素晴らしい」と言いながら川をボートで進む。ヤクザの小さな妹は、結婚は嫌だと言って、井戸に下ろされ水攻めに合い、結婚式では、その花嫁である妹は、ドラム缶に隠れて船で逃げる。そして最後は、豪華客船が現れて、若い二人を未来の旅路へと運んで行く・・・。人生そのもののような役割を川=水が果たしている。一方、死んだはずの二人の爺さんたちは、氷で生き返ったかのようだし、糞まみれになったヤクザは、ホースの水で洗われる。再生もまた水なのだ。


いつものようにアヒルや豚など動物たちも総出演。黒猫・白猫は、生と死を象徴するかのようにいつも一緒にいて、結婚式と死を見守り、ラストでは結婚の証人にまでなってしまう。

屋根裏からの落下や首吊りの宙づりや井戸での水攻めなどの上下運動はお決まりのパターン。ゴッドファーザーはいつも奇妙な乗り物に乗っていて移動し続け、ハンフリー・ボガードの「カサブランカ」をいつも観てる。大好きないつもの道具立てで、執拗にクストリッツァは、祝祭を描き続ける。結婚式こそ、人生の祝宴。ロマの音楽と人生はいつも一緒だ。そして、その祝宴は、「悪」も「暴力」も「死」さえも包含する。

ひまわり畑のラブシーンの明るくおおらかなこと!
動物たちの交尾のように、どこまでも性は明るく強く逞しくハッピーなのだ。

それにしても、歌いながら釘を抜く女には、笑ったなぁ~。


『黒猫・白猫』1998年 仏・独・ユーゴ合作、ユーゴスラビア映画1998年 ヴェネチア映画祭銀獅子賞最優秀監督賞受賞

監督:エミール・クストリッツァ出演:バイラム・セヴェルジャン、スルジャン・トドロヴィッチ、ブランカ・カティチ、フロリアン・アイディーニ

☆☆☆☆☆☆6
(ク)
スポンサーサイト

テーマ : ヨーロッパ映画
ジャンル : 映画

tag : 人生 ☆☆☆☆☆☆6

コメントの投稿

非公開コメント

No title

こんにちは!  今日はこちらにお邪魔しました。
「黒猫白猫」は、脇役たちが皆すごくいい味を出していると思うんですけど、
ヒデヨシさんからご覧になっていかがでした?
私は、ヤク中やくざのダダンとじいちゃん二人が特に気に入ってます。

この映画を見てるとドナウ川を下る旅がしてみたくなります。

すいさん!

どうも、コメントありがとうございます!

そうそう、脇役たちがいいですよね~。
ヤク中のヤクザのダダン、いつでも女をはべらせて、音楽を聴きながら、歌って踊っているのがいいよね~。彼が描く悪党は、いつでもどこか間抜けで憎めないですよね~。

それから、「人生は素晴らしい」と叫ぶじいちゃんもいいけど、いつも変な乗り物に乗っているゴッドファーザー。変なサングラスかけて『カサブランカ』いつも見てて・・・。

ドナウ川の流れに乗って、ロマの音楽聴きながら踊り続けたいものですね~(笑)
プロフィール

Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
札幌でテレビの仕事をしている
オヤジです。
映画にまつわる雑文です。
2006年からの映画レビュー。
それから、本の感想を少し。


twitter 719hideyosi

最新記事
お気に入り度
テレビドラマ「カルテット」
映画あいうえお順
カテゴリ
映画ジャンル&☆ランク
映画監督別
アキ・カウリスマキ
アラン・レネ
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
アルフレッド・ヒッチコック
アンドレイ・タルコフスキー
イエジー・スコリモフスキ
イザベル・コイシェ
ウェス・アンダーソン
ウディ・アレン
ヴィム・ヴェンダース
エドワード・ヤン
エミール・クストリッツァ
エリック・ロメール
オーソン・ウェルズ
ガス・ヴァン・サント
ギジェルモ・アリアガ
クエンティン・タランティーノ
クリント・イーストウッド
グザヴィエ・ドラン
コーエン兄弟
サム・ペキンパー
シドニー・ルメット
ジム・ジャームッシュ
ジャック・ロジエ
ジャン=リュック・ゴダール
ジョン・カサヴェテス
タヴィアーニ兄弟
ダルデンヌ兄弟
テオ・アンゲロプロス
テリー・ギリアム
ニキータ・ミハルコフ
ニコラス・レイ
パトリス・ル・コント
ハワード・ホークス
ビリー・ワイルダー
フェデリコ・フェリーニ
ファティ・アキン
フランソワ・オゾン
フランソワ・トリュフォー
ペドロ・アルモドバル
ポール・トーマス・アンダーソン
マイケル・ウィンターボトム
ミヒャエル・ハネケ
ラース・フォン・トリアー
ロバート・アルトマン
ロベール・ブレッソン
ロマン・ポランスキー

青山真治
今村昌平
犬童一心
石井裕也
大森立嗣
小津安二郎
北野武
宮藤官九郎
熊切和嘉
神代辰巳
黒沢清
是枝裕和
鈴木清順
園子温
成瀬巳喜男
西川美和
濱口竜介
深田晃司
藤田敏八
前田司郎
三木聡
山下敦弘
吉田喜重
読書感想・作家別
月別アーカイブ
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
映画
232位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
レビュー
111位
アクセスランキングを見る>>
フリーエリア
最新コメント
最新トラックバック
映画ベスト10 2009~2016年
2016年ベスト10
<洋画>
    ダゲレオタイプの女
    マイ・ファニー・レディ
    キャロル
    シング・ストリート 未来へのうた
    リザとキツネと恋する死者たち
    グッバイ・サマー
    サウルの息子
    マジカル・ガール
    ブリッジ・オブ・スパイ
    手紙は憶えている
<日本映画>
    淵に立つ
    クリーピー 偽りの隣人
    海よりもまだ深く
    ふきげんな過去
    SCOOP!
    永い言い訳
    オーバー・フェンス
    ディストラクション・ベイビーズ
    葛城事件
    湯を沸かすほどに熱い愛
    次点この世界の片隅に


2015年ベスト10
<洋画>
    やさしい女
    さよなら人類
    さらば、愛の言葉よ
    毛皮にヴィーナス
    雪の轍
    愛して飲んで歌って
    サンドラの週末
    サイの季節
    インヒアレント・ヴァイス
    ソニはご機嫌ななめ

<日本映画>
    海街dairy
    岸辺の旅
    FOUJITA
    百円の恋
    この国の空


2014年ベスト10
<洋画>
    エレニの帰郷
    グランド・ブタペスト・ホテル
    罪の手ざわり
    ウルフ・オブ・ウォールストリート
    ジャージー・ボーイズ
    インサイド・ルーウィン・デイヴィス
    6才のボクが、大人になるまで。
    フランシス・ハ
    ウォールフラワー
    ある過去の行方

    <日本映画>
    そこのみにて光輝く
    ニシノユキヒコの恋と冒険
    紙の月
    Sventh Code
    私の男


      2013年映画ベスト5
<洋画>
    1、「愛、アムール」
    2、「ホーリー・モーターズ」
    3、「オンリー・ラバーズ・レフト・アライブ」
    4、「いとしきエブリデイ」
    5、「ムーンライズ・キングダム」
    ※番外「カリフォルニア・ドールズ」(1981年)

    <日本映画>
    1、「共喰い」
    2、「さよなら渓谷」
    3、「恋の渦」
    4、「リアル 完全なる首長竜の日」
    5、「Playback」(2012年)


    2012年映画ベスト10
<洋画>
    2、「少年と自転車」
    3、「Pina ピナ・バウシュ 躍り続けるいのち」
    4、「ライク・サムワン・イン・ラブ」
    5、「きっと ここが帰る場所」
    6、「ドライヴ」
    7、「風にそよぐ草」
    8、「恋のロンドン狂騒曲」
    9、「おとなのけんか」
    10、「別離」
    次点 「裏切りのサーカス」
番外
    「永遠の僕たち」
    「J・エドガー」
    「家族の庭」

    3、「演劇1&2」
    4、「夢売るふたり」
    5、「アウトレイジビヨンド」
    番外 「ヒミズ」


2011年映画ベスト10
    3,「ブルーバレンタイン」
    4,「愛する人」
    5,「クリスマス・ストーリー」
    6,「トゥルー・グリット」
    7,「SOMEWHERE」
    8,「さすらいの女神(ディーバ)たち」
    9,「エリックを探して」
    10,「シリアスマン」
    次点,「エッセンシャル・キリング」

    3,「あぜ道のダンディ」
    4,「マイ・バック・ページ」
    5,「冷たい熱帯魚」

    2010年映画ベスト10
    3、フローズン・リバー
    4、アンナと過ごした4日間(2008)
    5、Babble/バブル(2005)
    6、パリ20区、僕たちのクラス
    7、クレイジー・ハート
    8、ずっとあなたを愛してる
    9、千年の祈り
    10、シルビアのいる街で
    次点、闇の列車、光の旅

    3、川の底からこんにちは
    4、さんかく
    5、ノルウェイの森
    次点、乱暴と待機


2009年映画ベスト10
    3、リミッツ・オブ・コントロール
    4、あの日、欲望の大地で
    5、人生に乾杯!
    6、ウェディング・ベルを鳴らせ!
    7、チェンジリング
    8、ロルナの祈り
    9、レスラー
    10、夏時間の庭

<日本映画>
    1、ディア・ドクター
    2、空気人形
    3、ウルトラミラクルラブストーリー
    4、インスタント沼
    5、ノン子36歳(家事手伝い)
検索フォーム
ブックマーク
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
FC2カウンター