「丹下左膳餘話 百萬兩の壺」山中貞雄

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山中貞雄生誕100年を記念してBSNHKで特集が組まれていたので、久々に再見。山中貞雄の洒脱で軽妙なこの時代劇を堪能。28歳の若さで戦死したこの天才監督が、もっと戦後に作品を撮リ続けていたら・・・と考えると残念でならない。こんなにカラッと軽妙にテンポのいい映画を撮れる日本人の監督は、現代においてもあまりいない。山中貞雄は、日本映画史的にも特異な存在なのだ。

この作品、あの天下の丹下左膳の時代劇モノなんだけど、ちっとも殺陣シーンがない。迫力ある斬り合いなどないのだ。座頭市と同じような浪人ものだけど、全然緊迫感がない。これは時代劇というより人間喜劇であり、ハリウッドコメディのようだ。この時代にこのセンスを持っていた日本人。きっとアメリカ映画やヨーロッパ映画を観まくっていたのだろう。

百萬兩の壺に振り回される人間喜劇。全く強くないお気楽な道場主の源三郎は、壷を探す名目で浮気をして遊びまわるだけ。丹下左膳と娯楽場の矢場の女将のやり取りも、痴話ゲンカのよう。繰り返し展開される省略と裏切り。台詞で「絶対に送っていかない!」と言い張っていたはずなのに、次のシーンでは送っている丹下左膳。つねに台詞が次のシーンでは裏切られるのだ。その省略の仕方のテンポのいい展開がとにかく可笑しい。

まんまと道場の者たちを騙したお気楽な源三郎。ラストは、探していた壷を丹下左膳に預けたまま遊び続けるところで終わる。探していたメインテーマである百萬兩の壺さえも、無意味なものにしてしまうナンセンスさ。

小津安二郎の初期映画でも「大学は出たけれど」や「生まれてはみたけれど」などのサイレントのコメディ作品はあるけれど、それにも通じる軽やかさ。山中作品は3本しか残っていないのが、とても残念です。

日本、1935年、上映時間 92分
監督: 山中貞雄、原作: 林不忘、脚本: 三村伸太郎、音楽: 西梧郎
出演: 大河内傳次郎、喜代三、沢村国太郎、山本礼三郎、鬼頭善一郎

☆☆☆☆4
(タ)


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テーマ : 日本映画
ジャンル : 映画

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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