「反撥」「袋小路」「水の中のナイフ」ロマン・ポランスキー

ロマン・ポランスキーの初期の映画は素晴らしい。息詰まるような閉塞感、どん詰まりの袋小路、水のイメージ、関係の不安定さ、確かなものが崩れていく崩壊感などなど。「水の中のナイフ」と「袋小路」はどちらも傑作だと思う。「水の中のナイフ」こそ、息詰まるサスペンス映画だ。張りつめた空気、ヨットの中の閉塞感。倦怠期の夫婦と若き美しき青年の不安定な三角関係。ずいぶんと昔に観た映画だけど、いまだにその鮮烈な印象が忘れられない。


また、「袋小路」はとても不思議な作品だ。ブラックコメディのような孤島の古城で繰り広げられる人間関係。ギャングの男たちの物語から、古城の中年男の話へ、そして妻の視点へと、主人公が移りながら、関係がいろいろと変わっていく。満潮の波が故障した車に押し寄せるシーンも印象的。そして、ラストのどん詰まり感。滑稽な悲惨さ。乾いた不条理な演出が冴えわたる。中年男と欲求不満の若い妻。ドヌーブの姉・フランソワーズ・ドルレアックが美しい。そこに現れた闖入者。この脚本がまた素晴らしい。そして、孤島で海に閉じ込められた景色もまたいいのだ。この2作品を未見の方は、是非ともおススメする。

姉・フランソワーズ・ドルレアック
さて「反撥」は、カトリーヌ・ドヌーブの暗さに驚く。「ロシュフォールの恋人たち」の美しき軽やかなドヌーブとドルレアック姉妹。ドルレアックは、事故で早死にしてしまったけれど、ドヌーブは「反撥」に、ドルレアックは「袋小路」に出ていたのだ。
この映画のドヌーブは、神経症的な妹という役を演じている。隣の部屋で姉の情事の声を聞く妹。妻子ある姉の彼への嫌悪が、ガラスコップに勝手に入れられた歯ブラシで示される。さらに、追い詰められた心理から生まれる幻想。壁の裂け目や壁から現れる男たちの手、手、手。胸をまさぐる手。キスされた後に思わず歯を磨いてしまうほどの性への嫌悪感。ポランスキーの追い詰め方がやはり密室的であり、息苦しくなるようだ。腐っていくウサギの肉と死臭。とても暗い神経症的映画である。

妹・カトリーヌ・ドヌーブ
でもやっぱり、「水の中のナイフ」と「袋小路」の完成度には到底及ばないと思いました。
「水の中のナイフ」
原題:NO´Z W WODZIE
監督・脚本:ロマン・ポランスキー
脚本:イエジー・スコリモフスキ、ヤクブ・ゴールドバーグ
撮影:イエジー・リップマン
音楽:クシシュトフ・T・コメダ
出演:レオン・ニエンチク、ヨランタ・ウメッカ、ジグムント・マラノウッツ
製作国:1962年ポーランド映画
☆☆☆☆☆☆6
(ミ)
「袋小路」
監督:脚本:ロマン・ポランスキー
脚本:ジェラール・ブラッシュ
撮影:ギルバート・テイラー
音楽:クリストファー・コメダ
出演:ドナルド・プリーザンス
フランソワーズ・ドルレアック
ライオネル・スタンダー
ジャック・マクゴーワン
☆☆☆☆☆☆6
(フ)
「REPULSION 反撥」
監督:脚本:ロマン・ポランスキー
脚本:ジェラール・ブラッシュ
撮影:ギルバート・テイラー
音楽:チコ・ハミルトン
出演:カトリーヌ・ドヌーブ
イボンヌ・フルノー
ジョン・フレーザー
☆☆☆☆4
(ハ)
スポンサーサイト