「パレード」行定勲

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吉田修一の原作を読んだのは随分前だ。原作の映像化はうまく言っていると思う。現代の若者たちの<ゆるやかなつながり>が垣間見えて面白い。

若者たちがなぜか共同生活している。金に困ってシェアする…とかではないらしい。外からこの部屋の入り込んだよそ者のサトル(林遣都/金髪で何考えているかわからない男を好演!)が共同生活者の住人である貫地谷しほりに聞くと、「ここってインターネットでいえば、チャットや掲示板みたいなもの。イヤなら出ていけばいいし、居たいなら笑っていればいい」という答えが返ってくる。「じゃあ、上辺だけの付き合いなんだ」と言い捨てるサトル。突き詰めないゆるやかな関係。孤独な寂しさを紛らわしつつ、お互いに深入りせずに平和に共同生活。そこには対立や葛藤はない。見せかけの平和な連帯。まさに携帯やネットでつながっているような現代的な関係だ。

物語はよそ者の男娼サトル(林遣都)がこの共同生活に入り込むことで、次第にこの<ゆるやかなつながり>の中で、個々の秘密やらトラウマやら亀裂やら問題があぶりだされていく。彼もまた「変な奴らだけど、なぜだかわからないけれど居心地がいい」というその共同生活は、どこかで孤独を癒す関係だからか。自らの孤独と向き合わないですむために…。

しかし、次第に闇や孤独があぶりだされ、驚きの事実が明らかになる…。

あまり説明のないラストもいい終わり方だ。それぞれの闇の理由などどうでもいいことだ。どんな人間にも人知れず「孤独な闇を抱えている」ということ、そのことから目を背けては生きられないということだ。


「マルチバースって知ってるか?」という台詞がある。ユニバース(単一宇宙)に対して、マルチバース(多元宇宙)。宇宙はひとつではなく、さまざまな宇宙が同時に存在し、各宇宙にはそれぞれ違った自分がいるのだと。どれが本当の自分かなんて、誰にも分かりやしないのだと。「世界と戦うこと」とは結局は、「誰だか分からない自分と戦うこと」なのかもしれない。

葛藤や闇さえも<ゆるやかな共同生活>の中に飲み込まれていく日本的な不気味さがこの映画にはあった。


最近、すっかり日本映画界を背負うような仕事を継続的にしている行定勲監督。大作も小品も満遍なく作る如才なさ。でもこういう小品の方が、彼らしい味が出る。本作は60回ベルリン国際映画祭、国際批評家連盟賞を受賞したそうだが、日本的なこの<不気味なゆるやかさ>は、現代の世界にも通じたのだろう。「今度は愛妻家」は未見だが、コンスタントに良作を監督している技量は、やはり現代日本映画の中心人物であるのは間違いないだろう。

製作年: 2009年
製作国: 日本
監督・脚本: 行定勲
原作: 吉田修一
キャスト:藤原竜也、香里奈、貫地谷しほり、林遣都、小出恵介 

☆☆☆☆4
(ハ)
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