「甘い生活」フェデリコ・フェリーニ

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「81/2」が1963年の作品。この「甘い生活」は、1960年。1954年の「道」はとてもわかりやすい名作だが、フェリーニの映画は年を重ねるごとに、どんどんストーリー性が削ぎ落とされていった。エピソードが次々と羅列される中で、寓話やイメージや幻想などが脈略なく積み重ねられていく。しかし、そのイメージの連鎖がフェリーニの魅力かもしれない。圧倒的な数の人物が登場し、いつだって大騒ぎ。お祭りのようだ。よくわからなくても、若いころ必死で観たフェリーニ。「甘い生活」は、パーティーを終えた朝、海辺に打ち上げられた巨大な魚のエイをみんなで眺めるシーンをやたらと鮮明に覚えている。乱痴気騒ぎの後の不気味な魚の死体。印象的だった。


久しぶりに見た「甘い生活」。「81/2」に比べると、やや長く冗漫な印象もあるが、喧騒とバカ騒ぎな俗世間に身をさらしているゴシップ記者マルチェロは、「81/2」の映画監督グイドそのものである。誰も信じられず、誰も愛せない男。「甘い生活」の発展形として「81/2」はあるのがあらためて分かった。

ファーストシーンは、キリスト像がヘリコプターでは運ばれる場面から始まる。宗教さえもが、見世物になってしまう時代。スキャンダラスな騒ぎがマルチェロのまわりで次々に起きる。ブルジョワ富裕層のバカ騒ぎのパーティー。アメリカから来た人気女優に群がる映画関係者やカメラマンや記者たち。マリアを見たという奇蹟を大中継するマスコミや野次馬たち。そして、殺人事件までに無節操にカメラマンは群がる。その誇張やスキャンダラスな喧騒の中で見え隠れする虚無・ニヒリズムや退屈、愛の不毛、恐怖や不安、そして死。

マルチェロがよりどころにしていた友の死が印象的だ。恋人エンマ(イヴォンヌ・フォルノウ)に愛で束縛されていたマルチェロは、女を追い求めつつ、誰も愛せない。芸術も家族も持っていた友スタイナー(アラン・キュニー)さえ、自殺してしまう。彼の家のパーティで彼が昔取った自然の風や嵐や鳥の音を聴かせるシーンがある。それは、ラストの海辺に打ち上げられた巨大でグロテスクな魚にも通じる。自然、そして死。裏も表も分からない死んだ魚エイの目は、我々をいつも見つめ続けているのだ。教会の壁画の天使に似た少女の声は、海の波音でかき消されて、マルチェロには届かない。

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この映画は、ほとんどが夜の映画だ。パーティーが夜に行われるからだとも言えるが、グラマラスなアメリカ女優(アニタ・エグバーグ)とイタリアの夜の町を彷徨うシーンが印象的だ。セクシャルで猫のように自由奔放な彼女が、遺跡のような夜のイタリアの街角の噴水に入り込むシーンは、美しい官能的な映像だ。そんな官能的な彼女もつまらない婚約者に束縛され、惨めな朝を迎える。
サングラスが似合う富豪の娘アヌーク・エーメとの夜のドライブと官能の一夜。アヌーク・エーメの美しさには惚れ惚れする。後半にマルチェロと城館で再会するが、その時の彼女の孤独も印象的だ。
さらに久しぶりに会った父との夜。クラブで大騒ぎした後に、女の部屋で父が苦しくなり、一人椅子に座って休む孤独なシーンも忘れられない。
そして、ラストのバカ騒ぎの乱痴気パーティー。部屋に舞う羽毛が効果的に使われているがもう自暴自棄のような騒ぎ方。
そんな騒がしい無意味な夜があるからこそ、その朝の光のシーンが意味を持ってくる。ラストの海辺で再会した少女と出会ったのは、マルチェロが珍しくタイプライターで何か仕事をしていた光に満ちた海辺の店だった。

つまり無意味で喧騒的な夜と、その喧騒的な夜の中で見つかる孤独や死と向き合うという映画なのだ。海辺に打ち上げられた死んだ魚の目は、虚飾にまみれた我々自身の目でもあり、孤独と死そのものなのだ。

La Dolce Vita
邦題 「甘い生活」

監督・原案・脚本 フェデリコ・フェリーニ
脚本 エンニオ・フラアーノ/トゥリオ・ピネリ/ブルネロ・ロンディ
撮影 オテッロ・マルテッリ 美術 ピエロ・ゲラルディ 音楽 ニーノ・ロータ
出演 マルチェロ・マストロヤンニ/アニタ・エグバーグ/アヌーク・エーメ


☆☆☆☆☆☆6
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テーマ : DVDで見た映画
ジャンル : 映画

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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