「東京島」桐野夏生

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昨日、友人のカメラマンが撮影したペルーのチチカカ湖のテレビ番組を見ながら、「あぁ共同体というのは、守られるべくして守られているんだなぁ~」と思った。

チチカカ湖では、トトラという葦で作った浮島で、数家族が共同生活しているのです。最近は、それを観光にしている共同体もあるようですが、取材した家族たちは、「魚の漁だけで私たちは生きていける。観光をすると、家族ごとの差が生まれるから、私たちは観光はやらない」と答えていました。競争原理が富と同時に争いを生むことを知っている彼らは、昔と同じ暮らしを選ぶべくして選び、共同体を維持しようとしているののですね。

そんなことを考えたのは、桐野夏生の「東京島」を読んだからでした。無人島に漂流した31人の男と1人の女のサバイバルな物語だ。


桐野夏生は、ハードボイルドから女たちの壮絶な戦いまで、男顔負けのハードな描写を得意としている女性作家だ。ある意味、男っぽい硬質さと毒々しさ。いやこのリアルさと残酷さは、男じゃ書けないかもしれない。男が書くハードボイルドはロマンと冒険のカッコイイ物語ですからね~。

桐野夏生は、毎回、かなり冒険に挑んでいる作家とも言えるだろう。初期の村野ミロシリーズを楽しんで読み始め、「OUT」では、普通の主婦たちがあるキッカケで変貌していく様を見事に描いた(ドラマ化もされた)。そのしたたかで現実的に残酷なまでに変貌する女たちを描く主題はある意味一貫している。「柔らかな頬」「光源」「玉蘭」「ダーク」「グロテスク」「魂萌え」などなど。

「東京島」が文庫になっていたので手にとって読んでみた。相変わらずリアルでハードだ。村上春樹の幻想的、非現実的小説とはまったく違う肉感的、欲望的な現実と逞しさ。「東京島」という無人島で暮らすことになるという設定自体が、あまりありえない設定ながら、あまりの生々しさに読んでいて、たじろぐ。

自分だったらどうなっているだろう?サバイバル生活だ。生きるか死ぬか、生き抜くタフさと強さは自分にあるのか?リーダーシップを発揮できるのか?人を守ることなんて出来るのか?社会性という皮を身ぐるみはがされて、裸のむき出しの人間性が試される。欲望と罪、男と女、生き残りをかけた戦い。

男31人と女1人。男たちの女を巡る争い。その女を40代の中年女にしたのも彼女らしい。強い男を渡り歩く女・清子の現実性と変貌。仮面の皮がどんどん剥がれていく男たち。生活適応力旺盛な中国人の集団を入れたあたり、社会的な対立など世界の縮図が見えてくるようだ。さらに船での脱走と失敗。宗教の役割や偽政者の存在。次々と死が増えていく中で狂気と出産、そして脱出と争い。

自分はどこまで何が出来るのだろう?と問いかけたくなる。裸の自分を。

共同体が共同体を維持していくためのシステムや機能ということを考えさせられた。チチカカ湖の彼らは、昔から変わらない生活を工夫しながら維持してきた。それがいかに大変なことか。争いと調和、個人の欲望と社会、生と死、歴史そして循環。

いずれにしても、どんな状況であろうともプラス思考で生き抜いていく智恵が必要なんでしょうね~。

(と)
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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