「春との旅」 小林政広

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人は誰かと寄り添って生きていきたい。それは血がつながっていようがいまいが、誰でもいい。気が合いさえすれば。そんな近くにいる人の温もりを感じたくなる映画だ。

役者がいい。柄本明の怪優ぶりはさすがだ。香川照之、大滝秀治、淡島千景、田中裕子、美保純、戸田菜穂。芸達者で存在感ある役者が脇を固めている。どれも適役で見事なキャスティングで安心して観れる。長廻しのワンカット芝居がなかなか見応えある。いまどきこんな感心な孫はいないだろうというくらい爺さん思いのしっかりした女の子、ガニ股歩きが印象的な春・徳永えりもいい。父親との対面場面はなかなか泣ける。この映画の山場だ。爺さんの姉兄弟めぐりの旅は、この父と娘の再会のための前奏だったことがよくわかる。

しかし、仲代達矢の芝居が大袈裟な身ぶりで気になった。昔からギョロギョロ目玉の舞台芝居がハナについてあまり好きではなかったのだが、今回も彼だけが残念だった。夢ばかり追いかけた甘ったれた頑固ジジイ役としては、はまり役ではあったのだが、どうにもわざとらしい。最初の大袈裟な怒った歩き方から、姉に会うと急に甘ったれになり、さらに仙台の夜は、「もう歩けねぇ」と春に甘えて駄々をこねる。そこに老いへの哀しみや孤独が感じられれば、まだ感情移入もできるのだが…。ただの甘ったれジジイだ。姉の言うとおりだし、弟の柄本明の言うとおり、五体満足で歩けるんだから恵まれたもんだ。

そしてあのラストがいただけない。もっと眠るように静かに…出来なかったのだろうか?あの大袈裟な倒れ方は、映画を台無しにしてしまっている。無理なこじ付け的な終わらせ方に感じてしまった。列車の中で、静かに眠るように逝った方がよりしんみりできたのに…。

「愛の予感」では、日常の身ぶりが何度も反復され、その反復とズレが緊張感の中で描かれていた。
愛の予感レビュー

今回も小林政広監督は反復を効果的に使っている。ガラス越しのカメラで、兄弟との対話がセットされ、空気を入れ替えるために窓が開け放たれ、「寒いじゃねぇか」という兄弟たちの台詞が反復される。そして兄弟の会話は、長廻しのワンカットで描かれる。それはまるで、役者同士の対決のようで見応えがある。特に柄本明との対決は面白かったなぁ。

地味で単調なロードムービーながら、シンプルな反復の姉兄弟たちとの再会の旅、そしてそれは父と娘のわだかまりがぶつかり合う再会としてクライマックスを迎える。役者たちの超クローズアップとワンカット長廻し芝居。望遠レンズが多用され、芝居の緊張感は伝わってくる。いずみ食堂(蕎麦がウマイ!)の蕎麦をすする二人のシーンもいい。そして、留萌増毛から宮城~鳴子温泉~仙台~日高と、繰り返される駅のホームや列車やフェリーなどの乗り物の旅。その移動こそが人生なのかもしれない。余韻が残るラストだったら、印象も違ったのに残念だ。


監督・原作・脚本:小林政広
キャスト:仲代達矢、徳永えり、大滝秀治、菅井きん、小林薫、田中裕子、淡島千景、柄本明、美保純、戸田菜穂、香川照之
製作国:2010年日本映画
上映時間:134分

☆☆☆3
(ハ)
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ジャンル : 映画

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