「小さな兵隊」   J=リュック・ゴダール

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「勝手にしやがれ」を低予算で撮って、興行的にも成功を収め、世界に衝撃を与えたたJ=リュック・ゴダールの長編2作目。しかし、アルジェリア問題に関して反政府的映画ということで、政府の検閲を逃れてスイスで撮影するも、1963年まで公開が延期された曰くつきの映画。実際活動している組織を実名で登場させていて、まさに現実の映画への引用が行われている。

ゴダールのミューズ、アンナ・カレーニナを初めて主演にして撮った作品であり、ゴダールはこの映画撮影後にアンナ・カレーニナと結婚。その後「気狂いピエロ」撮影前には破局を迎えるが、この映画のときは彼女に夢中だったのだろう。アンナ・カリーナの初々しさが溢れているし、ゴダールの彼女への愛の目線が伝わってくるような幸福な映画だ。モデルのヴェロニカ(アンナ・カリーナ)をカメラで撮るブリュノ(シェル・シュボール)に、「1秒24コマ回転の映画なら、、映画は毎秒24倍真実だ。」とつぶやかせてみせる。


アルジェリアの独立を阻止する秘密軍事組織OASの活動家であり、写真家でもあるブリュノ(シェル・シュボール)が5分で恋に落ちる。デンマークから来たばかりのモデル・ヴェロニカ(アンナ・カレーニナ)。彼は彼女の部屋で彼女をモデルに写真を撮る。元逃亡兵という弱みを握られ、確固たる信念も持たぬままOAS(アルジェリア独立を阻止するテロ組織)に属している彼は組織の罠にはまり、FLM(アルジェリア民族解放戦線)のロビーイストと思われるジャーナリスト、パリヴォダの暗殺を強要される。暗殺をためらい、組織から二重スパイの嫌疑をかけられたブリュノは、ヴェロニカがFLM支援者だったことを知るが、彼女と共にブラジルに逃亡するために必要な偽造旅券を組織に調達してもらうためパリヴォダの暗殺を決意する…。

引用やコラージュに溢れ、拷問や暗殺などサスペンス的要素がふんだんにありながらも、ハリウッド的盛り上がりを避け、淡々と平坦に描いている。暗殺を強いられ、恋と裏切りの映画でありながら、緊張や盛り上がりなど無縁であり、終わり方さえ唐突だ。ただ全体的にトーンは暗く、弾んでいないので面白みに欠ける。それは「勝手にしやがれ」や後の「気狂いピエロ」のジャン・ポール・ベルモンドの持っている軽妙さと違い、シェル・シュボールの陰鬱さにも起因している。

信念もないままに政治的な渦の中に巻き込まれた青年。拷問に耐えるのも政治的信念やヒロイズムとは無縁だ。ラスト、愛するヴェロニカを失って「あとはいつまでも悔いを残さず悲しまないことを学ぶことだった。だが、それがよかったのだ。なぜなら、ぼくの前には、まだたくさんの時間が残されていたからだった」とのつぶやきで映画は終わる。生き残ったもののやましさと残された時間。中途半端な人生がそこに投げ出される。それは、虚構的な盛り上がりを拒絶して観客に投げ出された<宙ぶらりんの映画の提示>でもあるのだ。

そしてこれは、アンナ・カリーナの初々しき仕草を楽しむための映画なのかもしれない。

Le Petit Soldat トレーラー Youtube


Le Petit Soldat
1960年,フランス,88分
監督ジャン=リュック・ゴダール
脚本ジャン=リュック・ゴダール
撮影ラウール・クタール
音楽モーリス・ルルー
出演シェル・シュボール、アンナ・カリーナ、アンリ=ジャック・ユエ、ポール・ブーヴェ、ラズロ・サボ


☆☆☆☆4
(チ)
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ジャンル : 映画

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