「アルファビル」 ジャン=リュック・ゴダール

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やや大袈裟な音楽と意味ありげなライトの明滅。ゴダール映画としては珍しい大袈裟さであり、フィクショナルである。しかし、近未来SF映画でありながら、大掛かりなセットを使わず、パリの夜の町や近代的モダンな建物でそのまま空々しい空虚な管理社会を撮ってしまうあたりがゴダールらしい。巨額のセットを作るのではなく、低予算でアイディアのみで作るどこか学生映画風でもある。考えてみれば、ゴダールの映画はいつだって批評的なのだ。アメリカの数々の犯罪映画や西部劇などの映画を知り尽くした上で、そのハリウッド的虚構から一歩距離をおいた上で批評的に映画を作り続けたのがゴダールだ。いわばこれまでの虚構的映画世界への批評精神から成り立っている。だから、いつだってゴダールの映画は、虚構の世界にどっぷり気持ちよく浸かることができない。劇的な世界に身を委ねることを拒んでいる。異化作用とでもいうべき<映画についての映画>なのだ。つまり批評的映画と言える。

アルファ都市というべき近未来の1984年の設定である。映画評論家の山田宏一氏によれば、1957年の一時的な「雪解け」後の荒廃/冷戦悪化したモスクワを描いたハードボイルドタッチのSF的寓話の形を借りた「政治映画」だという。スターリンの亡霊がまだ生きている<鉄のカーテン>下のモスクワが銀河系を超えて外国から辿り着くアルファ都市なのだ。ゴダールはその後、1968年のパリ5月革命へ、政治の季節へと疾走していき、政治映画へとどんどん傾倒していく。

電子頭脳α60が独裁支配する近未来の管理社会。涙を流すものたちが処罰され、感情を持つことが許されず、「なぜ」という言葉は禁止され、芸術や文化が抹殺され、番号で人間たちが管理されている世界。それを暗めの白黒画面と印象的なライトや換気扇やマイクなどで表現されている。特に素晴らしいのはプールでの処刑場面。斬新な映像構成で、不思議な空気感を作っている。

それでもどこか戯画的な近未来都市。同じヌーヴェルヴァーグのトリュフォーの「華氏451」とはやっぱり違う。近未来のモスクワを描いていようが、政治的意図があろうが、今見ても十分、斬新でありユニークなSF映画となっていて興味深い。観念的なSF映画であり、白黒画面が美しい。

ALPHAVILLE1965.jpg

「涙を流す者を救え!」。心を失ったアルファ都市からまだ記憶がうっすらと残っている美女を救い出す物語。ラスト、アンナ・カリーナを脱出させた後、エディ・コンスタンティーヌは「愛してる(Je vous aime)」という言葉を彼女に取り戻させるが、それとても劇的なハッピーエンドの終わらせ方ではない。どこか<とりあえずの終わり>でしかないのだ。男と女の車のシーンで終わるゴダール映画は多い。

こうして、ゴダールとアンナ・カリーナの愛の蜜月時代は終わる(離婚は1964年に既にしているが)。次に作った「気狂いピエロ」では、アンナ・カリーナに裏切られることになるのだから。


ALPHAVILLE
1965年/フランス:イタリア
監督 ジャン=リュック・ゴダール
脚本 ジャン=リュック・ゴダール
音楽 ポール・ミスラキ
撮影 ラウール・クタール
キャスト エディ・コンスタンティーヌ(ジョンソン=探偵レミー・コーション)、アンナ・カリーナ(ナターシャ・フォン・ブラウン)、ハワード・ヴェルノン(レオナール・ノスフェラチュ・フォン・ブラウン)、クリスタ・ラング(第3級誘惑係ベアトリス)、エイキム・タミロフ(アンリ)

☆☆☆☆☆5
(ア)
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テーマ : DVDで見た映画
ジャンル : 映画

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