「ガールフレンド・エクスペリエンス」 スティーヴン・ソダーバーグ

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スティーヴン・ソダーバーグ監督は不思議な監督だ。「セックスと嘘とビデオテープ」で性を題材に衝撃的なデビューを飾ったかと思いきや、「オーシャンズ11」のようなハリウッド娯楽大作も撮り、「チェ」2部作のようなドキュメント的な伝記映画も撮るという器用さ。つかみどころのない監督だ。そして、この作品はどちらかというとデビュー作「セックスと嘘とビデオテープ」に立ち返ったかのような実験的に意欲作である。そのぶんやや娯楽作品としてはとっつきにくい映画となっている。

物語として見やすい構成になっていない。ほとんどがとりとめのない会話なのだ。物語があまり進んでいかない。全米No,1のアダルト女優サーシャ・グレイを担ぎ出し、リーマンショック後の大統領選を控えた08年の秋のニューヨークが舞台だ。アダルト女優(彼女のどこがそれ程人気なのかよくわからないが…)を、高級エスコート嬢の役に据えて、彼女のクライアントたちとの様々な会話で映画が進んでいく。やや知的な高級娼婦は、食事をしたり映画を見たり、ホテルのバーで過ごし、そんな男たちとの会話から、金融の話や経済不況、政治や社会の断面が垣間見られる。まさにドキュメンタリーのようだ。セックスシーンはない。セックスを描かないで、セックス前と後の高級エスコート嬢とエリート男たちとの会話で構成されているのだ。そこに彼女のエスコート嬢としてのトップの位置を守るための闘いと自己管理があり、恋人のクリス(クリス・サントス)とのプライベートな時間もあることが分かってくる。そして、彼女は気になる男から一緒に週末を過ごそうと誘われ、恋人との関係がぎくしゃくし始める…。たったそれだけの物語だ。

とても知的な映画だ。セックスと資本主義と男と女。ニューヨークのエリートたちは、経済とセックスに明け暮れているのかもしれない。クライアントと恋人を、仕事とプライベートを分けて生きようとするも、それはそれほど単純にはいかない。「君の素顔が見たい」とジャーナリストの客は彼女に質問するが、彼女の素顔はどこにあるのか彼女自身でさえもわからなくなっている。だから彼女は生年月日から相性を判断する「人格学」の本にすがるかのようだ。

ラストのユダヤ教徒とのシーンが唯一エロティックだ。彼女は傷つきながらも、現代の一断面であるエスコート嬢という役割を演じ、プロとして仕事を続けていく。それはサーシャ・グレイがアダルト女優として演じ続けていくことの意志であるかのようだ。映画と現実が重なる。ドラマチックではないが、プロとしての役割に徹しようと生きる資本主義社会の一断面を描こうとしている意欲的な作品だ。



原題:The Girlfriend Experience
監督・撮影・編集:スティーブン・ソダーバーグ
製作:グレゴリー・ジェイコブズ
製作総指揮:トッド・ワグナー、マーク・キュバーン
脚本:ブライアン・コッペルマン、デビッド・レビーン
キャスト:サーシャ・グレイ、クリス・サントス、フィリップ・アイタン、グレン・ケニー、ティモシー・デイビス、デビッド・レビーン、マーク・ジェイコブスン
製作国:2009年アメリカ映画
上映時間:77分

☆☆☆3
(カ)
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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