「Bubble/バブル」 スティーヴン・ソダ―バーグ

スティーヴン・ソダ―バーグ監督の幻の作品が「ガールフレンド・エクスペリエンス」と一緒に公開された。しかし、この作品こそ観るべきソダ―バーグの傑作だ。
オハイオ州の田舎町。小さな人形工場で働くマーサ(ドビー・ドーブライナー)とカイル(ダスティン・アシュリー)。人が多いと混乱する青年カイル、父を介護しながら働くマーサ、どちらも孤独な淡々とした日常だ。そこへ現れた女性ローズ(ミスティ・ウィルキンス)がカイルと親しくなっていくことから起きる殺人事件。
事前に何の知識もなく観たから余計に、この傑作に驚いた。ソダ―バーグ監督の才能がこの映画に詰め込まれている。このアメリカの退屈な田舎町の殺人事件で、見事なまでの人間が描かているのだ。とにかくどこにでもいそうなおばさんマーサ役のドビー・ドーブライナーが素晴らしい。朝の人形工場へ車で向かう描写、不気味なまでの同じ顔をした人形たちの目や足。そして、淡々と暮らす日常。そして事件。この静かな田舎町の人間関係に些細なさざ波が起きるのだ。その些細なさざ波が殺人事件にまで発展してしまう人間の怖さが、実に巧みに描かれているのだ。そのドキュメンタリー的なタッチは、ガス・ヴァン・サント監督にも似ているが有名な役者を使わず、キャストの自宅を使って撮影したというインディペンデント映画ともいえるこの作品は、まぎれもない傑作だ。マーサが深夜、事件後に一人でピザを食べていたシーンがなんだか妙に心に残る。
英題: BUBBLE
製作年: 2005年
製作国: アメリカ
日本公開: 2010年7月17日
(シネマライズ)
上映時間: 1時間14分
監督・撮影・編集: スティーヴン・ソダーバーグ
製作: グレゴリー・ジェイコブズ
キャスト:ドビー・ドーブライナー、ダスティン・アシュリー、ミスティ・ウィルキンス
☆☆☆☆☆5
(ハ)
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