「闇の列車、光の旅」 ケイリー・ジョージ・フクナガ

yami.jpg

逃げろ!逃げろ!世界の果てまで!

人はなぜ彷徨うのか?なぜをするのか?なぜ移住するのか?
安住の地を求めて?どこかに夢の国があるから?豊かになるために?幸せになるために?何かから逃れるために?
とにかく、何かを求めて人はをする。ここではないどこかへ…。

そして、そんなの映画に僕はなぜか惹かれてしまう。彷徨う映画に共感してしまう。


これはホンジュラスからメキシコを経由して、自由の国アメリカを目指す移民の物語だ。アメリカに行けば、豊かな暮らしが待っているのか?そんなことは誰にもわからない。でも今よりはマシだろう。だから移動する。に出る。しかも命がけのに。

列車が圧倒的な迫力で、彼らを運び続ける。北へ。未来へ。移民たちが何人屋根の上に乗ろうとも、ビクともしない力強さだ。その推進力が映画を支える。残してきた哀しみや貧困、そして夢や希望を乗せて。しかし、メキシコでは強盗に合い、国境警備隊の検問や取り締まりから逃れるために時には命を落とす。それでも彼らは、北を目指す。

物語は、ホンジュラスに住む少女サイラとその父と叔父が列車の屋根に乗ってアメリカを目指すと、メキシコのギャング団に属している青年カスペルの物語が並行して語られながら始まる。やや分かりづらい出だしだが、カスペルのギャング団での物語が観客を引き込む。組織と個人の葛藤だ。ボスとの関係の中で恋人を失うどん詰まりの哀しみ。カスペルの未来は奪われたかのようだ。カスペルに仲間に入れられた12歳の少年スマイリーの存在が効果的だ。彼は未来のカスペルなのかもしれない。未来を奪われたカスペルは、列車の上で少女サイラと出会う。サイラにとって、カスペルは希望になる。追っ手から逃げる死へと向かう旅と未来への希望の旅が交錯し、列車は進む…。

移民の問題は途上国と先進国の問題だ。豊かな暮らしを求めて、人は移動する。そこにはギリギリの<生と死>がある。当然そこにはドラマが生まれる。ホンジュラスなど中南米からアメリカへの移民をテーマにして作られたこの映画は、そんな<生と死>のドラマを<列車の屋根>という舞台を使って見事に描いている。そして純粋な若者たちの<眼差しの映画>になっている。未来を見つめる少女サイラの眼差し、死へと向かうカスペルの眼差し、そして組織の中で生きようとする少年スマイリーの眼差し、それぞれの眼差しの強さが、とてもストレートに心に響いてくる。


英題: SIN NOMBRE
製作年: 2009年
製作国: アメリカ/メキシコ
監督・脚本: ケイリー・ジョージ・フクナガ
製作総指揮: ヘラルド・バレラ / パブロ・クルス / ディエゴ・ルナ / ガエル・ガルシア・ベルナル
音楽: マルセロ・サルボス
撮影監督: アドリアーノ・ゴールドマン
キャスト:エドガール・フローレス、パウリナ・ガイタン、クリスティアン・フェレール、テノッチ・ウエルタ・メヒア、ディアナ・ガルシア、ルイス・フェルナンド・ペーニャ、エクトル・ヒメネス

日本公開: 2010年6月19日
上映時間: 1時間36分
配給: 日活
カラー/シネマスコープ/ドルビーデジタル/PG-12

☆☆☆☆4
(ヤ)
スポンサーサイト

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag :

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
札幌でテレビの仕事をしている
オヤジです。
映画にまつわる雑文です。
2006年からの映画レビュー。
それから、本の感想を少し。


twitter 719hideyosi

最新記事
お気に入り度
テレビドラマ「カルテット」
映画あいうえお順
カテゴリ
映画ジャンル&☆ランク
映画監督別
アキ・カウリスマキ
アラン・レネ
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
アルフレッド・ヒッチコック
アンドレイ・タルコフスキー
イエジー・スコリモフスキ
イザベル・コイシェ
ウェス・アンダーソン
ウディ・アレン
ヴィム・ヴェンダース
エドワード・ヤン
エミール・クストリッツァ
エリック・ロメール
オーソン・ウェルズ
ガス・ヴァン・サント
ギジェルモ・アリアガ
クエンティン・タランティーノ
クリント・イーストウッド
グザヴィエ・ドラン
コーエン兄弟
サム・ペキンパー
シドニー・ルメット
ジム・ジャームッシュ
ジャック・ロジエ
ジャン=リュック・ゴダール
ジョン・カサヴェテス
タヴィアーニ兄弟
ダルデンヌ兄弟
テオ・アンゲロプロス
テリー・ギリアム
ニキータ・ミハルコフ
ニコラス・レイ
パトリス・ル・コント
ハワード・ホークス
ビリー・ワイルダー
フェデリコ・フェリーニ
ファティ・アキン
フランソワ・オゾン
フランソワ・トリュフォー
ペドロ・アルモドバル
ポール・トーマス・アンダーソン
マイケル・ウィンターボトム
ミヒャエル・ハネケ
ラース・フォン・トリアー
ロバート・アルトマン
ロベール・ブレッソン
ロマン・ポランスキー

青山真治
今村昌平
犬童一心
石井裕也
大森立嗣
小津安二郎
北野武
宮藤官九郎
熊切和嘉
神代辰巳
黒沢清
是枝裕和
鈴木清順
園子温
成瀬巳喜男
西川美和
濱口竜介
深田晃司
藤田敏八
前田司郎
三木聡
山下敦弘
吉田喜重
読書感想・作家別
月別アーカイブ
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
映画
224位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
レビュー
109位
アクセスランキングを見る>>
フリーエリア
最新コメント
最新トラックバック
映画ベスト10 2009~2016年
2016年ベスト10
<洋画>
    ダゲレオタイプの女
    マイ・ファニー・レディ
    キャロル
    シング・ストリート 未来へのうた
    リザとキツネと恋する死者たち
    グッバイ・サマー
    サウルの息子
    マジカル・ガール
    ブリッジ・オブ・スパイ
    手紙は憶えている
<日本映画>
    淵に立つ
    クリーピー 偽りの隣人
    海よりもまだ深く
    ふきげんな過去
    SCOOP!
    永い言い訳
    オーバー・フェンス
    ディストラクション・ベイビーズ
    葛城事件
    湯を沸かすほどに熱い愛
    次点この世界の片隅に


2015年ベスト10
<洋画>
    やさしい女
    さよなら人類
    さらば、愛の言葉よ
    毛皮にヴィーナス
    雪の轍
    愛して飲んで歌って
    サンドラの週末
    サイの季節
    インヒアレント・ヴァイス
    ソニはご機嫌ななめ

<日本映画>
    海街dairy
    岸辺の旅
    FOUJITA
    百円の恋
    この国の空


2014年ベスト10
<洋画>
    エレニの帰郷
    グランド・ブタペスト・ホテル
    罪の手ざわり
    ウルフ・オブ・ウォールストリート
    ジャージー・ボーイズ
    インサイド・ルーウィン・デイヴィス
    6才のボクが、大人になるまで。
    フランシス・ハ
    ウォールフラワー
    ある過去の行方

    <日本映画>
    そこのみにて光輝く
    ニシノユキヒコの恋と冒険
    紙の月
    Sventh Code
    私の男


      2013年映画ベスト5
<洋画>
    1、「愛、アムール」
    2、「ホーリー・モーターズ」
    3、「オンリー・ラバーズ・レフト・アライブ」
    4、「いとしきエブリデイ」
    5、「ムーンライズ・キングダム」
    ※番外「カリフォルニア・ドールズ」(1981年)

    <日本映画>
    1、「共喰い」
    2、「さよなら渓谷」
    3、「恋の渦」
    4、「リアル 完全なる首長竜の日」
    5、「Playback」(2012年)


    2012年映画ベスト10
<洋画>
    2、「少年と自転車」
    3、「Pina ピナ・バウシュ 躍り続けるいのち」
    4、「ライク・サムワン・イン・ラブ」
    5、「きっと ここが帰る場所」
    6、「ドライヴ」
    7、「風にそよぐ草」
    8、「恋のロンドン狂騒曲」
    9、「おとなのけんか」
    10、「別離」
    次点 「裏切りのサーカス」
番外
    「永遠の僕たち」
    「J・エドガー」
    「家族の庭」

    3、「演劇1&2」
    4、「夢売るふたり」
    5、「アウトレイジビヨンド」
    番外 「ヒミズ」


2011年映画ベスト10
    3,「ブルーバレンタイン」
    4,「愛する人」
    5,「クリスマス・ストーリー」
    6,「トゥルー・グリット」
    7,「SOMEWHERE」
    8,「さすらいの女神(ディーバ)たち」
    9,「エリックを探して」
    10,「シリアスマン」
    次点,「エッセンシャル・キリング」

    3,「あぜ道のダンディ」
    4,「マイ・バック・ページ」
    5,「冷たい熱帯魚」

    2010年映画ベスト10
    3、フローズン・リバー
    4、アンナと過ごした4日間(2008)
    5、Babble/バブル(2005)
    6、パリ20区、僕たちのクラス
    7、クレイジー・ハート
    8、ずっとあなたを愛してる
    9、千年の祈り
    10、シルビアのいる街で
    次点、闇の列車、光の旅

    3、川の底からこんにちは
    4、さんかく
    5、ノルウェイの森
    次点、乱暴と待機


2009年映画ベスト10
    3、リミッツ・オブ・コントロール
    4、あの日、欲望の大地で
    5、人生に乾杯!
    6、ウェディング・ベルを鳴らせ!
    7、チェンジリング
    8、ロルナの祈り
    9、レスラー
    10、夏時間の庭

<日本映画>
    1、ディア・ドクター
    2、空気人形
    3、ウルトラミラクルラブストーリー
    4、インスタント沼
    5、ノン子36歳(家事手伝い)
検索フォーム
ブックマーク
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
FC2カウンター