「フェイシズ」ジョン・カサヴェテス

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の不毛>を描き続けたのは、イタリアのミケランジェロ・アントニオーニ監督だが、ある意味アメリカのインディペンデント映画の父、ジョン・カサヴェテスも<の不毛>をアントニオーニとはまったく別の手法で描き続けた作家かもしれない。

この映画の会話はほとんど無意味なものだ。哄笑、諍い、与太話、ジョーク、早口言葉、歌、踊り、喧嘩、沈黙。タイトル<FACES>にもなっているように、描かれるのは、顔のクローズアップを中心にした役者の表情だ。そこには怖いまでの人間洞察がある。安易な物語に流れることなく、徹底した人間心理を描こうとする。無意味な言葉たちの乱射と裏側にこめられた孤独で寂寞とした心理。

物語はほとんど何もない。ある晩とその翌朝(36時間)までの金持ち中年夫婦のそれぞれのバカ騒ぎとその後だ。妻(リン・カーリン)との諍いの後に離婚を言い出した夫(ジョン・マーレイ)は、妻の前であからさまに高級娼婦(ジーナ・ローランズ)に電話をかけ、家を出て行く。そしてその娼婦と友人達のバカ騒ぎと諍い。妻は友人たちとクラブに繰り出し、若い男(シーモア・カッセル)と知り合い、家でまた盛り上がる。若い男をめぐっての中年の女性達の狂騒と哀しみ。

ラストの家に戻った夫と睡眠薬自殺未遂をした妻との家の階段でのシーンが素晴らしい。恐ろしいまでの冷たい空虚さだ。とりとめのない酔っ払いのバカ騒ぎと諍いとセックス。たったこれだけの要素で、ここまで人間そのものに迫る映画というのも凄い。まさに伝説的な映画と言えるだろう。


カサヴェテスは、この或る中流家庭のアメリカ人夫婦における36時間(1日半)の姿を描くために、約3年を費やしたと言われる。自宅を抵当に入れ、俳優で得たギャラを注ぎ込み、それでもお金が無くなる度に撮影は中断しながら、映画を完成させたと言う。自宅で撮影し、自宅ガレージは編集作業に使われた。まさに自主(インディペンデント)映画だ。映画を作ろうとする人、映像に係ろうとする人は、是非観てほしい作品だ。物語を描くのではなく、人間を描くことをこの映像は教えてくれる。


原題: Faces
製作・公開: 1968年 (1993年再公開)
監督・脚本: ジョン・カサヴェテス
撮影: アル・ルーバン
美術: フェドン・パパマイケル
音楽: ジャック・アッカーマン
録音: ドン・パイク
編集: アル・ルーバン、モーリス・マッケンドリー
製作: モーリス・マッケンドリー
キャスト:
ジョン・マーレイ (実業家の夫 リチャード・フォースト)
ジーナ・ローランズ (高級コールガール ジェニー・ラップ)
リン・カーリン (妻 マリア・フォースト)
シーモア・カッセル (ディスコの青年 チェット)
フレッド・ドレイパー (リチャードの友人 フレディ)
ヴァル・エイヴァリー (リチャードの友人 ジム・マッカーシー)
ドロシー・ガリヴァー (マリアの友人 フローレンス)
ジョアン・ムーア・ジョーダン (マリアの友人 ルイーズ)


☆☆☆☆☆☆6
(フ)
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テーマ : DVDで見た映画
ジャンル : 映画

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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