「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」瀬田なつき

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ビックリした。何の予備知識もないまま観たので、たわいもない淡い思春期の恋愛映画だろうと思っていた。相米慎二の『翔んだカップル』とか大林宣彦の『転校生』のような、若い男の子と女の子の物語かと。

瀬田なつきという新人女性監督が注目されているのは聞いていた。だから、まぁ観ておこうかと。

それでぶったまげた。まずその軽やかな浮遊感に。重力がないかのようにフワフワとしている男の子と女の子。そして、やがてその浮遊感の裏側に、重たい重たい過去が横たわっているのだということが知らされる。何よりもそのギャップの演出に驚いた。こんな重い話をこんな軽やかにやってしまうのかというその戦略的なしたたかさにビックリしたのだ。

入間人間原作の累計100万部突破の人気小説を映画化したのだという。ライトノベルというやつである。だからこの軽さはある程度、原作が持つものでもあるのだろう。しかし、嘘つきみーくん(染谷将太)が何度もカメラに向かって「嘘だけど」とつぶやくテンポのよさや「ルージュの伝言」の音楽の使い方や、屋上から飛び降りても空を浮遊する遊びなど、現実的な重みを意識的に取り払っている。学校の屋上に座って最初に登場するみーくんの存在からして、どこかこの世のものではないような軽さを持った印象だ。フワフワと踊るようにまーちゃんを尾行するその身振り。彼は「壊れたまーちゃん」を救うために空の彼方から嘘をつきにやってきたのだ。嘘とは身軽さでもある。

まーちゃん(大政絢…柴咲コウに似てる)の重い過去の現実から逃れるためには「嘘」が必要だった。嘘をつき続けることで、少年は嘘つきみーくんとなり、まーちゃんと何度でも出会うのだ。過去の重力に引きづり込まれないように、嘘つきみーくんは「嘘だけど」と何度もつぶやきながら、身軽に振る舞うのだ。だから屋上から飛び降りても、死ねない存在なのだ。二人の浮遊感に満ちた虚構性とは、過去のトラウマから逃れるための必然だったのだ。


それにしても父親役の鈴木卓爾の演技には驚いた。まるで北野武ではないか。『ゲゲゲの女房』の監督がこんな存在感のある役者だったなんて。その過去の重いシーンの演出がまた効いている。全体的な軽さの演出との対照性が映画を断然面白くしているのだ。

そして嘘つきみーくんとは、まさに映画そのものの体現者でもあるのだ。嘘をつき続けることで、僕らは現実の重みから解放されることを必要としているのだ。それはどこかゴダールの『勝手にしやがれ』のジャン・ポール・ベルモンドの軽さにも通じている。

『ウルトラミラクルラブストーリー』の横浜聡子に続いてまた一人期待の新人女性監督が登場した。瀬田なつきのオリジナル作品の次回作を観てみたい。

製作年: 2010年
製作国: 日本
日本公開: 2011年1月22日
上映時間: 1時間50分
配給: 角川映画
監督・脚本: 瀬田なつき
原作: 入間人間
脚本: 田中幸子
主題歌: 柴咲コウ
キャスト:大政絢、染谷将太、三浦誠己、山田キヌヲ、鈴木卓爾、田畑智子、鈴木京香

☆☆☆☆☆5
(ウ)
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : 青春

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『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』

みーまーのトリコ。 幼なじみのみーくん(染谷将太)とまーちゃん(大政絢)は小学生姉弟の失踪事件と謎の連続殺人事件が同時に起こっている街で10年ぶりに再会する。 入間人間の人気ライトノベルが原作。一番の期待の新鋭、瀬田なつきが商業映画デビュー!おめでたい...

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軽み!

ヒデヨシさん、こんばんは。
そうそう、鈴木卓爾さんが怖くて素晴らしかったですよねー。
というわけで五つ星嬉しいです。
あと私は短編の『あとのまつり』が大好きで。
機会ありましたらご覧になっていただきたいですー。

No title

かえるさん、コメントありがとう。
『あとのまつり』観てみたいです。
瀬田なつきさんは楽しみな監督ですね。

監督で名役者は、北野武、塚本晋也がいますが、鈴木卓爾監督もなかなかの面構えですね。
プロフィール

Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
札幌でテレビの仕事をしている
オヤジです。
映画にまつわる雑文です。
2006年からの映画レビュー。
それから、本の感想を少し。


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2011年映画ベスト10
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    次点、闇の列車、光の旅

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2009年映画ベスト10
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    9、レスラー
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<日本映画>
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