「愛する人」ロドリゴ・ガルシア

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原題にあるようにまさに『Mother & Child』の物語である。邦題はあまりパッとしないタイトルだが、ロドリゴ・ガルシア監督の前作『美しい人』にならったのだろう。ワンシーン・ワンカットで撮った9つの女性のオムニバス映画で、そのオムニバスの各物語がつながっていて面白い意欲的な映画だった。

さてこの映画もまた女性の映画である。母と娘の物語。さまざまな母と娘が登場する。37年間離れ離れの親子。その空白の間、母はいつでも娘を思っているが、17歳で産んで養子に出してしまった娘に怖くて会えない。そして気難しく鎧をまとって生きている。アネット・ベニングがそんな気難しい女、カレンを好演している。娘エリザベス(ナオミ・ワッツ)もまた母・カレンへの複雑な思いを抱えている。自立した弁護士として成功しているが、孤独で同じように鎧をまとって生きている。彼女にとってはセックスはゲームのようなものでしかない。隣のご主人を誘惑するあたりは、幸せな家庭への悪意すら感じさせる。

そして、そのカレンとその年老いた母(アイリーン・ライアン)との親子関係もねじれている。母が死んでから、お手伝いの女性から「娘の人生を台無しにしたことを悔いていた」と聞かされ、娘のカレンは泣き崩れる。直接言って欲しかったことを、お手伝いの女性に告げていたのだ。親子だからこそ、本当のことが言えないのだ。

エリザベスが妊娠して、盲目の少女と出会う。盲目の少女は、「あなたとは話やすい。母は私のことを心配し過ぎてうまく話が出来ない」と言う。親子だからこそ、距離が近すぎてうまくコミュニケーションが出来ない。そんなものだと思う。

子供が出来ないため養子をもらおうとする黒人女性ルーシー(ケリー・ワシントン)とその母親の関係も面白い。「母親ってもっと単純なものなのよ」とその母は言う。養子をもらって子育てにヒステリーを起こす娘に厳しく叱責する場面も印象的だ。血がつながっていなくても、母は子供によって母になるのだ。そのルーシーに「子供はいらない」と言ってお腹の子を養女に出す少女レイとその母親も出てくる。母は「私もシングルで妊娠して、子供はいらないと思ったけれど、今はあなたが一番大切だ」と告げる。

そんな風にいくつもの母と娘が登場し、パズルのように組み合わさりながら物語が進行する脚本がよくできている。血のつながった母と娘、養子縁組の親子。妊娠してお腹に出来た子供と母との関係。エリザベスの愛人となる上司ポール(サミュエル・L・ジャクソン)とその娘も出てくる。黒人の暖かい家族関係が描かれている。

さまざまな親子の関係がそこにある。その中心になっているには37年間会わないでいるカレンとエリザベス。心を通わせることが出来ないまま死んでしまった母。残された娘であるカレンはエリザベスを捜す決心をする。親子とは「一緒にいる時間が大切だ」と、カレンと結婚したパコ(ジミー・スミッツ)の娘が言う。血が繋がっていようといまいと、時間を重ねながら、母は母となり、娘は母を理解する。そして、過ぎ去った時間は取り返しがつかない。思いを寄せながらも、傷つくのが怖くて大切なことを伝えられないまま、過ぎていく時間。その悔恨がこの映画を支配しているのだ。

映画の後半は、ギスギスしていた二人の表情が和らいていく。特にカレン(アネット・ベニング)の表情の変化が印象的だ。お手伝いの女性の娘に対する態度の変化が効果的に演出されている。エリザベス(ナオミ・ワッツ)もまた、妊娠して母になることで、母への恨みを溶かしていく。運命の皮肉はあるが、そんな表情の変化が救いとなる女性映画である。アネット・ベニングとナオミ・ワッツが二人とも好演している。

養子縁組のシステムはキリスト教の影響なのか、とても進んでいる。日本では考えられないほどだ。日本では血のつながりを重視する傾向があるのかもしれない。少女で妊娠してしまい養子に出すケースがアメリカでは多いようだ。そんな複雑な親子事情もあるが、Mather&Childという女性にとって宿命ともいえるテーマを誠実に描いている。

原題:Mother & Child
製作国:2009年アメリカ、スペイン
配給:ファントム・フィルム
監督:ロドリゴ・ガルシア
製作総指揮:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
キャスト:ナオミ・ワッツ、アネット・ベニング、ケリー・ワシントン、サミュエル・L・ジャクソン、ジミー・スミッツ

☆☆☆☆4
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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