「覚えていない」佐野洋子

佐野洋子の『覚えていない』(新潮文庫)から「山手線夫婦の葛藤」より。

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男は頭とチンチンだけで、中が抜けるように出来ている。女は頭の下から××××までの間で出来ているの。中だけなの。だから男は頭が作り給うたものに耳をすませ、チンチンの命じるところに突入する。言ってみれば分裂症なのね。女は××××と首から下だけのものに命じられて、××××と首の間のものが頭なしに反応する。分裂するのはその中だけでいいの。で、男は中ぬけで、女は中だけだから、中のことはわかんないものだから、それを女性の神秘なんて大袈裟にいって歴史を作って来たつもりなのね。神秘なんて大袈裟なものではないがな。そういうものなんだわさ。
 それをこのごろの女、頭までのっけようとするから、中身がうすくなる、それを知的な女とか思っている。そーいうのになっちゃだめなの。だめってことないけど、世の中面白くなくなるよ。
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なんともまぁ、ストレートで下品である。男と女の違いは、いろんな風に言われているけれど、佐野さんくらいストレートな人はいないかもしれない。
渡辺淳一のエロ小説を恥かしいと笑いながら読むあたりも辛辣だ。この本は男と女のことをいろいろ書いている。


また、故・河合隼雄先生との対談の話が書いてあった。(「私は本当のタヌキババアになれるだろうか」)

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私が、「時々、私が何かいうと男の人が、タッとうしろにとびのくような気がする事があるんですけど」といったっら、先生は「それは、佐野さんが本当の事をいうからですよ、男は真実がきらいなんです。世の中本当の事ばかりだと生きてはいけません」といわれた。
私はうなだれ恥かしく、頭の中はものごころついて以来私がおかしたたくさんの失敗でぐちゃぐちゃになってしまった。
すべての失敗は、私がつめ寄り、ほじくり出したものばかりであった。
しかし、私が得たものも、また、つめ寄りほじくり出して手に入れたものであったような気もするのである。
困った事に、私が何かいって、人がうしろにとびのくのを感じる時、「ヤッタァ」という快感も確かにある事を認めざるを得ない。
そしてとびのいたものに対して、「このヒキョーモノ逃げるのか」という気分も起こるのである。そして、何よりも淋しいのである。
「生きてはいけません」という事は、多分この淋しさを指して先生はいわれたのだと思う。
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なかなか佐野洋子さんというストレートにズバッという性格をよくあらわしている文章だと思う。そして河合隼雄さんの懐の深さもすごい。
佐野洋子さんのストレートさも大切だし、河合さんの言う「本当のことばかりだと生きてはいけない」というのも大切な考えなのだ。

人と人の距離は難しい。なおかつ、男と女の距離はなおさら難しい。

あとがきで50代に自分の書き散らした文章のことをすっかり忘れていたと佐野洋子さんは書いている。
そして「恥かしい」と。

~~~~~~~~~~~~~~~~~
書かれた文章が恥かしいのではない。私は恥かしく生きて来たのだ。そしてみんな忘れているのだ。
父が言った通り、私は自分を忘れて生きて来たのだ(我を忘れて熱中したという意味ではな
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そんな風に忘れ去ることも一つの才能なのだと思う。ストレートに怒ったり、文句を言っても、忘れちゃうのだ。そこに佐野洋子さんのサバサバとした率直で憎めない愛すべきキャラクターがあるのだ。

(お)


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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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