「サイコ」アルフレッド・ヒッチコック

サイコ


いわずと知れたヒッチコックの古典的名作である。数々の映画作家に影響を与え、この映画以降、数々の似たようなサイコホラー映画が作られた。二重人格モノがはじめて映画で取り上げられた精神分析的な犯罪映画でもある。

久しぶりに見直して驚いたのは、前半のマリオン(ジャネット・リー)の横領事件のことをすっかり忘れていたことだ。それだけ余計にあのモーテルでの殺人事件と彼が住む屋敷の印象が強かったということでもある。

この映画は2つの事件が絡んでいる。前半は、事務員のマリオンが会社の金を横領して車で逃げる話。マリオンの恋人サム(ジョン・ギャヴィン)は、離婚した妻への慰謝料の支払いなどで金に困り、マリオンとの再婚話は進まない。そんな男女の停滞した関係が冒頭示されて、映画は始まる。マリオンは、銀行に預けるように社長に頼まれた大金を横領して逃げるのだ。マリオンは恋人サムが住む街へと向かう。途中、警官に不審に思われ、車を買い替えるなどのシーンもあり、物語はこのマリオンを中心に進むかに思える。

車を運転するシーンでの激しい豪雨。フロントガラスの前も見えないただならぬ雨が何かを予感させる。そして雨の中で辿り着いたモーテルとあの不気味な屋敷。窓辺に移る影。そして、ただならぬ母親の息子を叱責する声に観客は騙されていく。食事をする管理人室の剥製の鳥も効果的に使われている。そして、彼女は自分も罠にかかった剥製の鳥のようだと気づき、盗んだ金を返しに行く決意をするのだったが・・・。

だからある意味で、前半のマリオンの横領逃亡劇は映画のダミーの物語なのだ。見せかけの物語。観客は、この雨のモーテルから何か不吉な気配を感じ、後半の予想外に展開する物語に引き込まれていくのだ。なぜ、最初からこの男(アンソニー・パーキンス)の物語として始めなかったのだろう。ダミーの主役ともいえるマリオンであるジャネット・リーは、映画の前半部で早々に殺されてしまうのだ。

あの有名なシャワーシーンだ。多くの短いカットのモンタージュによる迫力とあの音楽。そしていかにも不吉なイメージの屋敷の存在感とアンソニー・パーキンスの不気味さがなんといってもこの映画の魅力だ。あらゆる闇を飲み込んでしまうような屋敷の怖さこそが、映画の中心になっている。

つまり、マリオン(ジャネット・リー)は案内人なのだ。あの雨のモーテルと屋敷へ観客を誘うための導入の物語。最初からあのモーテルと屋敷が舞台だったとしたら、もっと停滞した重い映画になったろう。前半の案内人がいるからこそ、突然現われた男、アンソニー・パーキンスの妖しい存在感とあの不気味な屋敷が際立ったのだろう。そんな気がする。



1960年アメリカ映画・パラマウント
原題:PSYCHO
監督:アルフレッド・ヒッチコック
原作:ロバート・ブロック(『気ちがい』)
脚本:ジョセフ・ステファーノ 
音楽:バーナード・ハーマン 
撮影:ジョン・L・ラッセル 
キャスト:アンソニー・パーキンス、ジャネット・リー、ヴェラ・マイルズ

☆☆☆☆4
(サ)
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テーマ : TVで見た映画
ジャンル : 映画

tag : サスペンス

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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