「引き裂かれたカーテン」アルフレッド・ヒッチコック

ヒッチコックにしては凡庸な作品だと思う。

『サイコ』と同じように恋人たちの愛のシーンから始まる。デンマークのコペンハーゲンに向かう客船に、国際会議に出席するアメリカの物理学者マイケル・アームストロング(ポール・ニューマン)と、その秘書で婚約者のセーラ・シャーマン(ジュリー・アンドリュース)。幸福な愛の語らいは最初だけ。これから不吉な事件が起きるのだ。2大スターの競演のヒッチコック50本記念作品だそうだ。

停電で暖房が故障し、乗客たちが寒さに震えている。この寒さが乗客を襲う物語なのかと思いきや、あっさり停電は直り、物理学者マイケルがなにやら怪しげな行動をする。婚約者に内緒でコペンハーゲンの書店から暗号のメッセージを受け取り、急に会議に出席せずに東ドイツに向かうのだ。不審に思った婚約者セーラは、一緒に東ドイツに同行し、物理学者マイケルが、祖国アメリカを裏切り、鉄のカーテンの向こう側の東ドイツに亡命することを知る。東ドイツの科学者と核ミサイル研究に加わるというのだ。しかし、これはアメリカにとってのスパイ行為であることが次第にわかってくる。東西冷戦対立があった時代の科学者の核ミサイル研究をめぐるスパイ合戦。東ドイツで、次第に追い詰められていく様子は、戦時下のナチスから逃げる戦争映画のようだ。

スパイの連絡を取リ合うために農家を訪れ、監視役の秘密国家警察のグロメック(ヴォルフガング・キーリング)に付けられて、彼を農婦とともに殺す場面がある。グロメックは、いかにもドイツ人的な悪役だ。黒い皮のコートが印象的だ。彼を台所のガスコンロで殺すシーンは迫力がある。

あと注目すべきは、路線バスを装っての脱出劇。乗客が全員、組織のメンバーのサクラ。警察の尋問や、盗賊の侵入、警察の誘導、さらに本当の路線バスに追いつかれたら、ニセの路線バスであることがばれてしまう。このあたりのサスペンスが山場だ。それから、バレエコンサート会場で追い詰められる場面は『知りすぎた男』のオーケストラ・コンサート場面を少し思い出す。あの映画は音の映画だったが。劇場はサスペンスの舞台によくなるのだ。舞台上のバレリーナは、踊りで回転しながら客席にいるスパイのマイケルを見つけて通報する。このバレリーナは、最初の空港とラストの船でも重要な役割を果たす。彼女の使い方はウマイ。「火事だ!」のひと言で劇場が混乱し、そのスキに楽屋の衣装箱に隠れて逃げるのだが、この辺の描写はやや安直か。

科学者同士の研究の秘密の探りあいの場面も、この映画の見せ場である。真実を知りたく、真実を教えたくもある科学者としてのプライドを刺激しながら、研究の秘密を聞き出す二人のやりとりのシーンは面白い。

だがいずれにせよ、『北北西に進路を取れ』のようなスパイに間違われて巻き込まれるサスペンスよりも、確信犯として東ドイツに潜入するスパイ科学者のこの物語は、いまひとつ魅力がない。婚約者をスパイ行為に巻き込んでしまうあたりが物語の軸だが、どうもその愛の物語が感動的というわけでもない。


引き裂かれたカーテン
製作年:1966・米
製作:監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:ブライアン・ムーア
撮影:ジョン・F・ウォーレン
音楽:ジョン・アディスン
出演:ポール・ニューマン、ジュリー・アンドリュース、リラ・ケドロヴァ、ハンスイェルク・フェルミー、ヴォルフガング・キーリング、ギュンター・ストラック、ルドヴィヒ・ドナト

☆☆☆3
(ヒ)
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テーマ : TVで見た映画
ジャンル : 映画

tag : サスペンス

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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