「冷たい熱帯魚」 園子温

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恐るべし園子温。初めて彼の映画『紀子の食卓』を観て打ちのめされたが、今回もグッタリきてしまった。残念ながら今観るべき映画ではない。

「メメントモリ」(死を想え)という言葉が有効だった時、死や暴力が平和な家庭の裏側に潜み隠れているような病んだ時代において、園子温の歪んだ暴力と欲望、毒にまみれた悪意と死に満ちた強烈な映像感覚は力を発揮する。しかし、いま、東北ではまだ多くの死体が瓦礫の山の下にあり、ここまで強烈な「力」と圧倒的な数の「死」を見せつけられている現在では、この映画はキツかった。これ以上、「死」や「暴力」など観たくないのだ。今観るべき映画ではなかった。

いびつに強調された性。スーパーで買い物する女のミニスカート、そして大きな胸の谷間。薄暗い食卓で食事する家族のなかにあって、その性は妙に居心地が悪い。アンバランスな映像。それがずっと続く。万引きした娘を迎え行くその夫婦に降り注ぐ異様な大雨の不気味さ。さらに水族館のオヤジのでんでんが圧倒的な勢いと明るさで登場する変な感じ。そして、またしても妙に肌を露出したその妻の登場まで、この居心地の悪さ、アンバランスさはなんなんだろう。映画は、いつ何が起きてもおかしくない歪んだ空気の中で進んでいく。

それは翌日娘が働き出した水族館の女の子たちのTシャツギャルたちやら、朝の掛け声やらにも監督のお得意の新興宗教のような不気味さが出ている。そして突然、豹変するでんでんとそれに反応する妻…というあたりから歪みが登場人物たちに蔓延し、次第にストレートな暴力映画になっていく。

ラストに至る娘の笑いまで、その圧倒的に歪んだ性と暴力はすべての登場人物の心が病んでいるようだ。特筆すべきは、常に小悪党の名脇役であったでんでんを大悪党に仕立て上げたキャスティングと演出だ。渡辺哲はいつもどおりの迫力でお見事。吹越満の得体の知れなさもハマッている。そして女優陣の居心地の悪さはこの映画のテイストなのだろう。黒沢あすかの異様な迫力と無表情さ。ヤクザたちが事務所に押しかけて来た場面で、扉の向こうで女子従業員とレズビアン行為に耽っているあたりはお見事だ。さらに神楽坂恵のアンバランスさがなんとも奇妙なのだ。

園子温特有のストレートな描写のエグサは僕はあまり好きではない。前半の何が起きるかわからない食卓シーンの不安定さや水族館の奇妙な感じなどは面白いのだ。直接的に暴力を描かないで、もっと抑制した表現へと向かえないのだろうか?才能はあるのに、いつも残念な感じがしてしまう。個人的な好みの問題か?観終わって、グッタリと疲れきってしまった映画でした。

英題: COLDFISH
製作年: 2010年
製作国: 日本
日本公開: 2011年1月29日
上映時間: 2時間26分
配給: 日活
監督・脚本: 園子温
脚本: 高橋ヨシキ
出演:吹越満、黒沢あすか、神楽坂恵、でんでん、梶原ひかり、渡辺哲

☆☆☆☆4
(ツ)
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : ホラー

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No title

こんばんは。
今観るべき映画ではない、とは全くその通りですよね。
いつものぬるま湯ニッポンでなら、こういう刺激も魅力的なのですが。
今はでんでんより、節電とか発電とかで頭がいっぱいで?

紀子の食卓や愛のむきだしに比べると、作風に慣れたせいもあってか大絶賛とまではいかなかった今作でしたー。
次作も楽しみではありますが。

No title

*かえるさん
でんでんよりせつでんね♪

いまの日本はぬるま湯どころか、核の熱が冷やせなくて
困り果てている沸騰状態ですものね。

園子温、気になる監督なのですが
もっと大人になってほしいなぁ~。
プロフィール

Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
札幌でテレビの仕事をしている
オヤジです。
映画にまつわる雑文です。
2006年からの映画レビュー。
それから、本の感想を少し。


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    8,「さすらいの女神(ディーバ)たち」
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    10,「シリアスマン」
    次点,「エッセンシャル・キリング」

    3,「あぜ道のダンディ」
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    5,「冷たい熱帯魚」

    2010年映画ベスト10
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    3、川の底からこんにちは
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2009年映画ベスト10
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    7、チェンジリング
    8、ロルナの祈り
    9、レスラー
    10、夏時間の庭

<日本映画>
    1、ディア・ドクター
    2、空気人形
    3、ウルトラミラクルラブストーリー
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    5、ノン子36歳(家事手伝い)
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