「フード・インク」 ロバート・ケナー

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アメリカの「食」事情に正面から切り込んで、問題を告発したドキュメンタリー。結論ありきで誇張した演出で見せるようなイヤらしいプロパガンダ的なドキュメンタリーではなく、真面目にアメリカの食産業を牛耳る大企業の問題点を告発していて、好感が持てる。さぞかし、いろいろなプレッシャーがあったことだろう。

それにしてもアメリカは凄いことになっている。資本主義社会が行きつく果ては、こういうことになってしまうのだろうか?大量生産、大量消費、農業の効率化、オートメーション化、さらに移民を使った人件費の抑制、科学の力による遺伝子組み換えや抗生物質、農薬・化学肥料による生産性・採算性の向上。

アメリカの食肉会社は大手の数社で握られているという。ファーストフードに流通させる大量のひき肉。安定需要に安定供給。牛が広大な敷地を持つ牧場ならぬ生産工場に集められ、超高速のラインで処理されていく。食は農業ではなく、工業だ。さらに大量生産で作られる安価なコーンを飼料に入れることで、本来草を食べる草食動物である牛の内臓には負担がかかり、抗生物質を飲ませることで、O-157などの危険な大腸菌を持つようになる。そして、超高速のラインで完全に消毒されないで消費者にわたるケースもあるのだとか。ハンバーガーを食べてO-157の食中毒で死亡した男の子の話が出てくる。さらにひき肉工場でアンモニア消毒していたり、もうその裏側は恐ろしいことになっているのだ。しかも、これらの食肉業者の大企業が政治家と癒着していたりして、食の安全が守られていない。添加物などの表示も不透明だったりするようだ。

肉会社の大企業は、生産者に設備投資をさせて借金で縛りつけ、自分たちのやり方を押し付ける。大量の鶏舎では、動くこともできない状態で飼料を与え続け、鶏は歩くことさえできずに足が折れてしまう。従来の1/2の期間で2倍のサイズの鶏を育て、消費者が大好きな胸肉を大きく効率よく作るのだ。

鶏も牛も豚ももはや生き物ではない。モノとして工場ラインに乗せられ殺され、加工され流通される。そこには、命の尊厳など微塵もない。家畜は食料の材料でしかない。どれだけ効率よく生産できるか。しかも肉の解体作業などは移民などに低賃金でやらせる。あの工場のラインで運ばれていくニワトリたちの姿は、恐ろしいを通り越して漫画のようですらある。

アメリカの農場の30%はコーン畑だという。コーンは家畜の飼料だけではなく、ジュース、ケチャップ、ダイエット甘味料、スナック菓子などあらゆる食品の原料として使われている。そのコーンは遺伝子組み換えで効率よく大量に作られたものであり、アメリカも日本もそのラベル表示の義務はないというのだ。

オーガニックで栽培していたり、昔ながらの農場で鶏や豚に放牧で草を食べさせている生産者が救いのように出てくる。消費者の求めるものが変わらないと、この巨大な食のシステムは変わらない。安いことには理由があるのだ。貿易自由化によって、アメリカの巨大農業でメキシコの農業が壊滅して、メキシコの農業者は移民として工場生産者になっていった。グローバル化による功利主義の果てには強いモノだけが勝つのだ。そして、この大量生産、大量消費の安さの裏側の怖さに気付かないと、世界の食の事情はとんでもないことになる。オーガニックもブームになって流通に乗るようになったが、これも儲けるための戦略だったりする。ちゃんと消費者が見きわめないと、騙されかねないのだ。

ちょっとアメリカのファーストフードや食べ物が恐ろしくて食べられなくなるかもしれない。
日本がこうならないためにも、地産地消、地域の生産者と消費者の信頼関係を大事に築いていくしかないのだ。食は経済だけの問題ではなく、命をつなぐものなのだから。


製作年 2008年
製作国 アメリカ
配給 アンプラグド
監督 ロバート・ケナー
出演 エリック・シュローサー,マイケル・ポーラン

☆☆☆☆4
(フ)
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : ドキュメンタリー

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