「逃走迷路」 アルフレッド・ヒッチコック

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無実の男が事件に巻き込まれて犯人と間違われて逃げる映画。『海外特派員』『知りすぎていた男』『北北西に進路を取れ』と同じパターン。ヒッチコックお得意の高所でのサスペンス、落下の恐怖がラストのニューヨークの自由の女神が使われている。『北北西に進路を取れ』では、ラシュモア山の岩肌にはワシントン、リンカーン、ジェファーソン、ルーズベルトの巨大な大統領の顔が彫ってある上を逃げる有名なシーンがある。巨大で有名な観光地での高みでのサスペンスという意味では同じですね。

航空機工場で火事が起こり、手渡された消火器を友に渡したら、ガソリンが入っていて火は燃えさかり友が焼死。ナチの破壊工作員による殺人事件として警察が判断し、犯人として追われる羽目に。真犯人の男フライ(ノーマン・ロイド)を追うバリー・ケーン(ロバート・カミングス)は、逃げながら様々な人物と出会う。手錠をかけられて逃げいるのに、盲目の老人が彼を無実だと理解して助けてくれる不思議なシーンがある。彼を助けるトラックの運転手もなぜ彼をそこまで助けるのか不明だ。盲老人の姪パット(プリシラ・レーン)は彼を警察に突き出そうとするが、いつの間にか彼と同行するヒロインとなる。このあたりの彼女の揺れ動く心理描写もやや物足りない。モデルのパットの看板が道路のあちこちに立てられているところは面白い。さらにサーカス一座のトラックでは、彼を警察に引き渡すかでメンバーが話し合う場面は印象的。結局、盲人やサーカス芸人などの社会的弱者が彼を助ける構図になっている。一方、破壊工作員に成りすまして潜入する金持ちのパーティーの場面があるが、そこはナチの工作員たちの巣窟。逃げながらのパーティーシーンもヒッチコック映画にはよく出てくる。この映画でもすべてを明らかにしようとして追い詰められるサスペンスが面白い。そしてヒロインとのキスシーンまである。一度は捕まったバリーだが、スプリンクラーに火をかざして、火事騒ぎを起こしてその隙に逃げ出す。冒頭の火事とともに、火と水がここでも使われている。

それから、映画館の中での発砲シーンがある。映画館に逃げ込んだ破壊工作員。フィルムの中で行われる発砲と同時に映画館の中でピストルが発砲される。観客が撃たれるも映画のフィクションの発砲に紛れて気がつかれない。そして、そのうち本物の銃撃戦が目の前で展開されていることを知り、映画館は大騒ぎになる。劇場もヒッチコック的サスペンスの舞台である。フィクションの中のフィクション。パーティーも劇場も夢の物語と同時に進行するもう一つの物語という二重性が面白い。

ラストは有名な自由の女神の場面。なぜか逃げ場のない自由の女神で捕まるフライ。追い詰めて自由の女神の塔の上からフライが落ちそうになるのを、背広の袖をつかんでバリーが助けようとする。『泥棒成金』でも犯人の女が屋根を上から落ちそうになるのを助けて真実を白状させるシーンがあったが、ここではフライは背広が破れて落下してしまう。落ちるまでに背広の袖が破れるカットバックが挿入されるが、落下のサスペンスをただただ楽しむヒッチコックのがいるような気がした。ここでは、彼が助かるかどうかは、サスペンスになっていない。なぜ助けようとしたのかもよくわからない。ただただ落下という運動があるのみだ。

あちこちに描写不足、意味不明のシーンがあり物足りないが、ヒッチコックの巻き込まれサスペンスの原型のようなものがこの映画にはあるのかもしれない。


原題 Saboteur
製作年 1942年
製作国 アメリカ
配給 インターナショナル・プロモーション映画
監督 アルフレッド・ヒッチコック
脚本 ピーター・ヴィアテル、ジョーン・ハリソン、 ドロシー・パーカー
撮影 ジョゼフ・ヴァレンタイン
出演 ロバート・カミングス、プリシラ・レーン、ノーマン・ロイド、オットー・クルーガー、ボウハン・グレイザー

☆☆☆3
(ト)
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テーマ : TVで見た映画
ジャンル : 映画

tag : サスペンス

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