「イリュージョニスト」 シルヴァン・ショメ

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長編デビュー作『ベルヴィル・ランデブー』で独特の映像センスと音楽の圧倒的なスイング感で僕らを魅了してくれたシルヴァン・ショメ監督、ジャック・タチが娘のために書いたという幻の脚本をショメ監督がアニメ化した。映画には全編、ジャック・タチへのオマージュが溢れている。前作のリズム感溢れる音楽そのもののようなアニメに比べて、今作は静謐な大人のアニメである。前作の過剰さとは正反対の引き算の余白のアニメ。多くのことが語られない。それでいて豊かな詩情と郷愁。何でもかんでも説明してしまう昨今の幼稚な表現ではなく、抑えた表現で観客に想像する楽しみを与えてくれるフランス文化の懐の深さを感じた。

フランスの喜劇王、『ぼくの伯父さん』をはじめ生涯6作品しか世に残さなかったジャック・タチ。彼が娘のために書いたもの自ら映画化しなかったこの幻の脚本は、時代遅れの老手品師タチシェフが彼自身に近過ぎたからだとも言われている。ユロ氏そのものであるこのタチシェフをほかの誰かが演じることなど出来ない。しかし、アニメなら可能だった。かくして幻の脚本は映画になった。

アニメの老手品師タチシェフの立ち居振る舞いはユロ氏そのものである。セリフを極力廃し、1950年代のパリ、そして自然豊かなスコットランドの島、エジンバラの古きよき街の風景、場末の劇場、楽屋、ホテルなど、とにかく背景となる舞台が素晴らしい。古いものから新しいものへと移り変わりつつある時代の転換期。落ちぶれ手品師やピエロや芸人たちが場末で芸をやるもあまり受けない。ロックンロールが流行りつつあり、テレビが生まれ、時代から切り捨てられる人々の哀愁が漂っている街角。そんな街角を舞台に繰り広げられる、手品師をなんでも夢を実現できる魔法使いを思い慕う娘アリスと老手品師タチチェフの旅物語。

ゆっくりと余白や余韻を楽しみつつ、静かにヨーロッパの古き良き街並とノスタルジー溢れる古い時代の風に思いを馳せ、父と娘のような二人の心のさざ波を感じて欲しい。


英題: L'ILLUSIONNISTE
製作年: 2010年
製作国: イギリス/フランス
日本公開: 2011年3月26日
監督・脚色・キャラクターデザイン・作曲: シルヴァン・ショメ
オリジナル脚本: ジャック・タチ
美術監督: ビアーネ・ハンセン
合成・ビジュアルエフェクト: ジャン=ピエール・ブシェ
デジタル・スーパーバイザー: キャンベル・マカリスター
サウンド・デザイナー: ジャン・グディエ
オーケストラ・指揮・音楽プロデューサー: テリー・デイヴィス
ミュージカル・ディレクター: マルコム・ロス
キャスト(声の出演):ジャン=クロード・ドンダ、エルダ・ランキン、ダンカン・マクネイル

☆☆☆☆4
(イ)
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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