「太陽に灼かれて」 ニキータ・ミハルコフ

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「機械じかけのピアノのための未完成の戯曲」(1976)、「愛の奴隷」(1976)、「黒い瞳」(1987)、「12人の怒れる男」(2007)などなど、ロシア的精神と家族、ロシア的田園風景の美しき映像とロシア的人間たちを描いてきたニキータ・ミハルコフ監督。本作は、最近公開されている「戦火のナージャ」(2010)の前篇とも言える作品だ。これを見てから、「戦火のナージャ」を観なくては…と思ってチェック。さすがにミハルコフ監督だ。素晴らしい!

冒頭は、暗いモスクワの部屋。1930年代のスターリン粛清の嵐が吹き荒れていた時代。ピストルを頭に当てる青年ミーチャ(オレグ・メーシコフ)。一転、のどかな田舎の小麦畑と美しい光。そんな美しき景色を泥をはね上げて戦車が進もうとして、小麦畑で村人たちが立ちはだかる。そこへ軍人たちを叱責して戦車を追い返す革命の英雄コトフ大佐(ニキータ・ミハルコフ)が登場。そして美しき若い妻マルーシャ(インゲボルガ・ダプコウナイテ)と娘のナージャ(ナージャ・ミハルコフ)。ナージャはミハルコフ監督の実の娘であり、とにかくかわいい。

ミハルコフ監督のお得意なロシア的家族の群像劇的な描写がいい。そして、変装して現れるミーチャおじさんの登場でドラマが始まる。ミーチャは、妻のマルーシャの元恋人だったらしいことが分かる。

美しい川遊びの描写。コトフ大佐の足元にある割れた瓶で、ミーチャのコトフへの悪意をさりげなく描くあたりが巧い。そしてボートの上でのコトフ大佐とナージャの幸福な父と娘の愛(実の親子だけに実に幸せそう)。一方で、元恋人たちの思い出の描写と毒ガス避難訓練。さらにピアノの演奏と踊りで盛り上がるロシア的な幸福な一族が楽しい。毒マスクをかぶったままでピアノを演奏するミーチャの影。対照的に描かれるコトフ大佐の孤独。ミーチャのナージャに語るおとぎ話で、コトフ大佐が、ミーチャとマルーシャの仲を引き裂き、国外に派遣させたことが分かる。さらに、ミーチャは秘密警察で、コトフ大佐を捕まえに来たことが分かる。サッカーの興じる一族の幸福と二人の緊張感。

革命の英雄だったコトフ大佐が、スパイ容疑で裏切り者として逮捕される。大佐に愛する恋人との仲を引き裂かれ、故郷の家を想いつつ、秘密警察になった男。時代によって立場が変わり、翻弄される男たち。ラスト、小麦畑の中に浮かび上がるスターリンの肖像の気球。無邪気でかわいい何も知らないナージャ。純粋に人間を信じている無垢なる少女と現実の苦さを知りつくしている男たち。その対比が見事だ。

火の玉のような不思議な光が森を彷徨い、炎を上げる。人間では計り知れない謎の光がそこにある。翻弄される光。偽りの光、偽りの太陽なのか。

割れた瓶の光や手首の傷、美しき平和的な田舎の風景や光の美しさと戦争や革命の影。幸福で和やかな一族の中で秘かに繰り広げられる人間たちの暗い確執と緊張。そのコントラストがとにかく素晴らしい映画だ。


太陽に灼かれて(1994)
UTOMLYONNYE SOLNTSEM
BURNT BY THE SUN
製作国 ロシア/フランス

監督 ニキータ・ミハルコフ
製作 ニキータ・ミハルコフ、ミシェル・セイドゥー
脚本 ニキータ・ミハルコフ、ルスタム・イブラギムベコフ
撮影 ヴィレン・カルータ
美術 ウラジミール・アロニン、アレクサンドル・サムレキン
音楽 エドゥアルド・アルテミエフ
キャスト:ニキータ・ミハルコフ、インゲボルガ・ダプコウナイテ、オレグ・メシーコフ、ナージャ・ミハルコフ

☆☆☆☆☆5
(タ)
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テーマ : TVで見た映画
ジャンル : 映画

tag : 人生

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はじめまして。

見事な映画評だったため、
当方のブログ(FC2ブログ)で
こちらの記事をトラックバックさせていただきました。(リンク)
7/25のブログです。

いろいろご覧になっていらっしゃるのですね。
これを機にお気に入り登録させていただきました。
またのぞかせていただきます。

No title

*シリウスさん
ありがとうございます。
いつでもいらしてください。

シリウスさんのブログがわからなかったのですが
教えていただけますか?

申し訳ありません

肝心のブログのURLを忘れてしまいました。
こちらです。
   ↓
『BLOG by シリウス』  http://sirius165.blog89.fc2.com/

今度、舞台があるので、それに関連したブログをUPしました。

ありがとう

*シリウスさん
舞台をご覧になるのですね。面白そうですよね。僕も観てみたいと思っておりました。
札幌にはあまり演劇は来ないので残念です。

シリウスさんは、歌舞伎や演劇をいろいろご覧になっているようですね。
うらやましいです。

映画については、好きでいろいろ観てます。
ハリウッド映画は極端に少ないですが・・・。
いつでも遊びにいらしてください。
プロフィール

Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
札幌でテレビの仕事をしている
オヤジです。
映画にまつわる雑文です。
2006年からの映画レビュー。
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