問題の未来に先送りするのではなく、未来に責任を

昨夜、震災後の社会を考えるフォーラムを聞き札幌時計台に行く。
北大の教授で政治学者として有名な山口二郎氏と社会学者の大澤真幸氏だ。

大澤真幸氏は、「偽ソフィーの選択としての原発問題」と題して興味深い話をしてくれた。レベッカ・ソルニットの『災害のユートピア』を紹介しながら、災害地では人間は利他的(他者のために動く)になるという。略奪や強盗が起きて生存競争が置き、「自然状態」(トーマス・ホッブス『リヴァイアサン』)のようになり、人間は利己的になると思われているが、実は「友愛コミューン」とも呼ぶべき、助け合いの美しいつながりが生まれるという話。ニューオリンズのハリケーン・カトリーナの時でさえ、人々は実際には助け合っていたのだと。今回の東日本大震災では、それは顕著に現われ、世界的にも助け合いの「希望」が示された。それこそが「災害のユートピア」であると。

しかし、人間の命を危険に晒す原発問題で、<脱原発>を目指すべきなのは自明の倫理的結論でありながら、なぜか現実はそうではない。それはなぜなのか?という問いについて語っていた。

哲学的難題「ソフィーの選択」とは、ユダヤ人であるソフィーはガス室送りのために二人の子供のうち、どちらかを選ばなければいけないという究極と選択を迫られる。兄か弟か、そんな選択は誰にだって出来るわけがない。

しかし今の原発問題は、「子供」を選ぶか、「エアコン」を選ぶかというような単純な問題のはずである。誰もが自明な選択である「子供を選ぶ」ことが出来ないのはなぜか。それは原発問題とは、「1000年後の子供」か「現在のエアコン」か?という選択だからだ。原発は今の問題でありながら、未来の問題なのだ。だかしかし、「現在のエアコン」をわれわれは手放せない。人とは未来の問題は先送りにしてしまいがちなのだ。今の便利さや今の豊かさを享受することと未来の安心を考えること、それを間違って選んできたから、今の原発問題がある。

リスク社会とは、いつでも「想定外」を呼び寄せる。「想定外」とは、知識や技術が足りなかったから、「想定外」なのではなく、「わかっているけれど信じていなかった」から、「想定外」なのだ。可能性はわかっていても、「そんなこと起きるわけがない」と信じなかったから。「知」と「信」の間には大きなギャップがある。

1000年に一度かもしれない未来の破局の可能性に向けて、どの程度の準備をすればいいのか?もはや中途半端な準備など意味がない。

今の問題だけではなく、未来に向けた世代を超えた責任をどう担えるのか?それが政治的にも社会学的にも大きな課題だと語られてフォーラムは終わった。

菅首相は、思い切った決断で「浜岡原発」の停止を訴えた。たぶん政財界の根回しをしていたら潰されていただろう。彼のフライングなのだと思う。それでも、このフライングこそが、新たな一歩なのだ。

浜岡原発が停止すれば、夏の電力不足や景気の低迷やその影響など、話し合いが足りないと批判される。でも批判するだけでは何も変わらない。批判されても前に進み出すビジョンがなければ、潰されて終わりである。

未来のことを語るのは、いつても理想論で「現実の利害」の前では後回しにされる。しかし、「今」と「未来」とをどう結びつけて語るかが、今こそ問われているような気がする。

※参考  
大澤真幸「浜岡問題の隠喩的な拡張力」
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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