経済成長ゼロ時代に、みんなが安心して暮らせる社会

いま、時代は大きな転換点を迎えている。日本の経済が低迷してどうにも行き詰まりを感じていたところに、今回の大震災と原発事故。エネルギー問題も賠償問題も何とかしなければいけない。それは同時に今日本が置かれているあらゆる問題、経済問題も社会福祉問題も高齢化と人口減問題も消費税問題もすべてが大きな見直しを迫られているのだ。僕はこれまで自分の好きな世界への関心が高く、社会的・政治的問題に関して、どこか他人事で、深くコミットしたり、考えるのを避けてきたようなところがある。しかし、いま、嫌でも考えなければいけない時代に突入した。そんな風に思う。誰かに任せておくのではなく、みんなが自らの頭で、日本のこれからを考えていかないと未来はない。

そんな思いから、前回の時計台フォーラム、北大教授で政治学者・山口二郎氏と社会学者の大澤真幸氏の原発問題の話に続いて再び話を聞きにいく。今回は経営コンサルタントである波頭亮氏と山口二郎氏の社会福祉と国家ビジョンの話だ。以下、そのフォーラムのまとめです。

「成熟日本への進路:新しい国家ヴィジョンのたたき台」

・経済の成熟 1995年から2010年の15年間日本はゼロ成長
  経済成長の方程式=(労働力)+(投入資本)+(技術係数)すべて増えていない。
  90年代以降の経済政策は無効 財政政策(226兆円投入)も金融緩和(ゼロ金利)
  も効果なし。
  逼迫する財政赤字 公債残高は悪化の一途。(920兆円)

  この経済対策は効果無いのは、経済の構造が「成熟フェーズ」に入ったにもかかわらず、
  「成長フェーズ」のまま経済政策を続けている誤り。

・人口減/超高齢化社会の到来
  人類初の経験 高齢化率23%は世界1位。2940万人/1億2720万人
   10年間で65歳未満人口1100万人減、高齢者人口650万人増
   (3590万人/1億2270万人)高齢化率30%へ
  高齢者対策の遅れ
    10年後の医師不足33万人、医療従事者不足220万人、
    介護サービス従業者130万人不足

・深刻化する貧困・格差問題
  社会保障費のGDP比18.6%(仏29%、独27%、英21%)
  相対的貧困率14.9%(年収114万円以下、1900万人) 
   先進国中の2位の悪さ(1位は米国)

 ⇒新しい国家ヴィジョンが必要!
  「国民の誰もが生活(医・食・住)を保障される社会」
    経済成長が無くても、「分配」によって社会は豊かになれる。
    成長フェーズのインフラ・・・道路、港湾、電力などの経済成長に寄与する国土整備
    成熟フェーズのインフラ・・・医療、介護、生活保護など生活安心のための社会保障

 (1)必要コスト
  誰もが無料で、医療や介護を受けられるためのコスト
    ⇒13.5兆円追加必要(総額50兆円)
  生活保護対象世帯カバー率20%を100%にするには⇒10,4兆円(1世帯20万円程度)
  子供手当てを全額支給すれば⇒16兆円必要
  
  つまり30兆円の支出増で、誰もが安心して生活できる。
    ⇒国民負担率40%⇒50%(英・独並み) 仏61%並なら70兆円 北欧70%

  
 (2)避けては通れない増税!
    増税を避けてきたことが、国の政策の大きな誤り
   ①消費税 10%アップ 15%で22兆円  仏20%、独19%、英18%、米9%
   ②金融資産課税の導入  
     1400兆円ある銀行に眠っている個人金融資産に税金をかける。
      税率1.0%で14兆円⇒眠っているタンス預金が使われ、消費活動が起きる効果
   ③相続税率のアップ 年間相続遺産額(約28兆円)の30%で8.4兆円
          金持ちから税収を得る。高齢になっても使われない遺産に税金をかける。
    これらの増税で45兆円の増収で、赤字国債の償還も可能。

つまり、経済成長の幻想をいつまでも捨て切れないための誤った経済政策。そしてゼロ成長を見据えた上で、みんなが医療や介護に不安を持つことなく安心して暮らせるための「分配論」。北欧型社会福祉社会を目指すというもの。そのためには増税が必要だという考え方だ。

ここで問題なのが、官僚の硬直化だ。官僚が税金を無駄遣いしている限り、増税は国民に受け入れられない。波頭亮氏の考え方は、増税のお金を国民に直接給付することだ。官僚が差配する余地の無いものにしなければいけない。税金の使い道を直接給付でハッキリとさせることだ。バラマキではなく、公共サービスとしての直接給付。広くあまねく公明正大に人々が社会的恩恵を得られるシステム。その国家ヴィジョンがはっきり示されない限り、増税の理解は得られないだろう。

また官僚が政治家とメディアをコントロールしている現実への危機感を強く指摘していた。今回の原発事故も官僚によって情報がコントロールされていると。メディアもそんな情報操作に加担していると。官僚は政治家の言いなりにならないことを教育されているとか。そんな官僚支配からどう政治が脱け出して、国家ヴィジョンを示せるかが問題だと。

社会保障を厚くすることによって、労働意欲が失われるなどの批判があるが、そこは長期失業者(失業保険で働かずに生きる人たち)を出さないための工夫(独・仏のような硬直化した雇用形態ではなく、新陳代謝が可能なデンマーク型雇用形態)は必要だろう。また、お金のためだけではない、社会貢献としての働くことの価値の見直しなども必要。

いずれにせよ、来るべき高齢化社会を見据えた社会福祉問題は避けて通れない未来であり、労働人口減による経済成長はまず見込めない。巨大に膨らむ財政赤字や増税問題も避けて通れない議論だろう。どこまでの社会保障国家にするか・・・。すぐそこまで迫っている危機に対して先送りせずに、みんなで議論すべき時期に来ているのは間違いない。  

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