「奇跡」 是枝裕和

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ややJR九州のCMのような感じがする。この映画を1分くらいのCMにまとめたら、とてもいい感じになるような気がする。そういう意味では、あの名作『誰も知らない』には遠く及ばない。それでも随所に是枝監督のやさしい眼差しが溢れていて、子供たちの生き生きと走る姿が素晴らしい。家族の日常のひとコマという意味では『歩いても 歩いても』に近い作品だ。

桜島の火山灰が降る町、鹿児島に両親が別々に暮らすために引っ越してきた兄(前田航基)は「意味がわかんねぇ」と不満を繰り返す。冒頭、部屋の畳を汚す火山灰を律義に雑巾で拭いている。学校へ行く坂道も「意味わかんねぇ」と文句が続く。そんな兄が、「奇跡」の旅を終えて帰ってきた時、桜島に「ただいま」と挨拶する。行くときも「行ってきます」と言っていた。「意味がわかんねぇ」不満(両親の不和)を受け入れて、前へと歩き出した。

火山灰が降り積もりつつも、そんな厄介な山とともに暮らす生活こそが、我々の暮らしなのだと思う。自然の力=危険と隣り合わせで暮らしていることを、われわれは忘れてしまいがちだ。何が起きるかわからない自然とともに我々は暮らしているのだ。そのことをつい忘れてしまう。鹿児島では、いつも見上げるとそこに煙モクモクの桜島がある。そういう場所では、自然への畏敬の念がいつもでも町の人々の暮らしとともにある。だからこそ「行ってきます」「ただいま」と挨拶したくなるのだ。ある意味、厄災にあわずに生きていることだけでも、われわれは「奇跡」なのかもしれない。

新幹線がすれ違う時、火山噴火のアニメのイメージとともにこれまでの日常の細部のイメージがカットバックされる。この日常の細部にこそ、大切なものがあるのだ。その細部を大切に生きることこそ、子供達にとって必要なことなのだ。ポテトチップの残りかすや自販機の下の10円玉、コスモスの種などなど。

そして子供達はやたらと走る。その走る子供達をカメラは追いかけることで、映画の運動性、躍動感が出ている。さらに列車の窓から見える動く風景が、子供たちの未来のワクワク感・冒険を演出している。

奇跡の瞬間を求めてやたらと走る続けたあの頃を、僕らは思い出すのかもしれない。大いなる自然に抱かれて、細部を大切に握りしめて、何かを求めて走り続けたあの頃を。そんな懐かしさがこみ上げてくる映画だ。


製作国:2011年日本映画
配給:ギャガ
監督・脚本・編集:是枝裕和
撮影:山崎裕
キャスト:前田航基、前田旺志郎、林凌雅、永吉星之介、内田伽羅、橋本環奈、磯邊蓮登、オダギリジョー、夏川結衣、阿部寛、長澤まさみ、原田芳雄、大塚寧々、樹木希林、橋爪功

☆☆☆☆4
(キ)
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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