「トスカーナの贋作」アッバス・キアロスタミ

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イタリアの田舎の都市、トスカーナを舞台に繰り広げられる中年男女の<ロマンチックなラブストーリー>では決してない。奇妙な物語だ。真実がどこにあるかハッキリしない。まさに本物と贋物。

英語とフランス語とイタリア語。イギリス人である作家のジェイムズ・ミラー(ウィリアム・シメル)が英語を話し、そしてフランス人の女性(ジュリエット・ビノシュ)がイタリア語で街を案内し、息子とはフランス語を話す。二人はイタリアのトスカーナの講演会場で出会う。いや、出会ったのかどうかさえよくわからない。イギリス人作家が美術の贋作をテーマにした本の講演をして、ファンである女性がサインを求めて、ドライブして古都を歩くうちに夫婦に間違えられ、二人は夫婦の真似事をする物語のように見える。だけど、次第にその真似事は本物の夫婦のように15年間暮らしてきたお互いの不満をぶつけ合う。しかもフランス語で。さらに新婚旅行で訪れたホテルの一室で思い出を語り合う二人。本当に初めて会った二人なのか?

彼らはもともと夫婦で、出会ったフリをしていたのか?それなら、彼女の子供は、「お母さんは、あの人とデートをしたくて電話番号を渡したんでしょ」と非難するのはなぜなのか?夫婦ではなく、もともと二人は知り合いだったのか?なんらかの関係があって、初めて出会ったフリをしたのか?彼女の子供は、もしかしたら彼の子供なのかもしれない・・・。などといろいろ考えられる。

なにが本物で何が贋物なのかはよくわからない。わざとどうとでもとれるようにしているのだ。男と女はそもそも演じあう。映画もまた演じあう。どこに虚構があってどこに真実があるのか?それは観る人の自由である。

女は見られることを求め、関係を求める。男は自分勝手でいつでも自分のことで頭がいっぱいだ。そんな普遍的な男と女の諍いを二人は歩きながら、レストランで、銅像の広場で、言い合いを続ける。とても旧来の間柄のように。誰かに言うことは、もしかしたら自分の勝手な物語なのかもしれない。お互いがお互いに自分のことを言い合っているだけかもしれない。虚構の物語は、あらゆる語りに隠されている。男とはこういうもの、女はこういうものというのも一つの物語だ。若い新婚のカップルにという物語は本当に永遠なのか?そしてそんな物語にいつでもわれわれは振り回され、物語の呪縛におちいり、迷宮に入り込んでしまう。

トスカーナの古都の鐘の音が、本物と贋物の物語、男と女の迷宮から解き放つキッカケになったのか?彼は9時には駅に戻って来れたのだろうか・・・?それとも物語の迷宮に入り込んだままなのだろうか?男と女はいつでも何かを演じているのかもしれない。



原題 CERTIFIED COPY
製作年 2010年
製作国 フランス=イタリア
配給 ユーロスペース
監督・脚本: アッバス・キアロスタミ
撮影: ルカ・ビガッツィ
キャスト:ジュリエット・ビノシュ、ウィリアム・シメル

☆☆☆☆4
(ト)
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