「復興の精神」養老孟司ほか

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3.11後、われわれは何をなすべきなのか?どのように生きていくべきなのか?
時代の大きな転換点を迎えたとも言われる今
各界の著名人から震災後の日本についてのメッセージをまとめた本であり、それぞれ面白かった。

おなじみ養老孟司氏は、慌てず騒がず、「敵か味方か」とか決め付けず、「仕方がない」と「こんちくしょう」で乗り切り、「自分の人生を答え」として受け入れることを勧めている。

私はいつも、人生は「答え」だと言うようにしています。多くの人は逆に考えています。人生は「問い」ではないのに、若いうちは特に勘違いをしている。だから、「人生とは何か」「生きるとは何か」と考えるのです。
この年になってわかるのは、今の自分がこうしてあること自体が、何かに対する答えだということです。
あなたがいまこうしてここにいる。そのこと自体が人生という質問の答えなのです。



自分で自分の人生をコントロールできると勘違いするようになると、人生の意味を考え行き詰まる。

生きていれば、さまざまな悪いことが起こります。しかし、何かあったときには最終的にプラスになるように考えるしかないのです。得をするというよりは、人生が完成する、より成熟する、より良い答えになるということです。自分の人生がよりよい作品になる。そう思えばいいのです。



またこの人もおなじみの脳科学者、茂木健一郎氏は、

「今回の震災が、私たちが変わるきっかけにならなういとしたら、他の何がきっかけになるというのだろう。変わることを恐れてはいけない。つながることをためらってはいけない。開くことを避けてはならない。日本人は、必ず、不死鳥のようによみがえる。復興の精神は、日本人の変化への希望の中にこそ、見いだされるのだ。」

と力強く変化へのメッセージを語る。

なかでも僕が一番興味深く読んだのは、禅僧である南直哉(じきさい)氏のメッーセージだ。
ステレオタイプの哀悼の意や、紋切り型の言葉は、何も伝わらないことを指摘し、言えないという無力さの自覚、「祈り」の声について語る。

現代の我々が祈りを知らずに生きていられたのは、我々が無力であることの、深い無知、いや長い忘却の果ての無知ゆえである。

この長い忘却を、我々はずっと「進歩」「発展」「成長」と呼んできた。それらは、要するに、できるだけ「すべて自分の思いどおりにしよう」という意志を、金と道具つまり資本と科学技術がひたすら追いかけていくことにしたのである。

「みんなで思いどおりにする」のではなく、「互いに融通しあうことで、互いに節制する」意志が求められよう。

私が言う「他者」とは、単に「他人」のことではなく、決して「思いどおりにならない」何かである。つまり、自分以外の人間としての他者であり、そして自然であり、死である。

被災地の夥しい死。しかし、我々は死体と死者について、消滅と不在について語ることはできても、死については語ることは出来ない。生者が語りうる何者も、それは死ではない。死は決して「対象」にはならないのだ。すべての意味の拒絶だけが死の意味である。

他者も自然も死も、また巨大なシステムも、「思いどおり」にはできない。ところが、それらこそが同時に、我々の生の根拠であり条件である(死のない生は、生ではない)。この矛盾に人の実存としての苦がある。それは共になる、共にあらざるを得ない苦なのだ。

ゴーダマ・ブッダが発見した「苦」。「苦」の発見と無力さの自覚が、他者に対する、自然に対する、死に対する敬虔を呼び覚ます。そして巨大なシステムへの懐疑を促す。

ならば、他者に直面し、その無力さにおいて切に意志して、我々は今、この大震災後の生を受け容れるべきである。今までとは別の存在の仕方を、決断すべきである。仕様がないなあ、と低く呟いて、それでも、立つべきなのである。



作家の橋本治氏は、病気である身で起きた今回の大震災に対して、不安がる体力さえも自らになかったために、余計なことは考えなかったと言う。

「冷静になる」ということは、「余分なことを考えない」ということであっても、「物を考える」ということは、どうも「悲観的になる」ということでもあるらしい。本当なら「物を考える」ということは、「悲観的になる方向に進んで、その先ですべてをグイッとねじ曲げて楽観的な方向に直す」ということなんじゃないかと思ってはいるのだが、今はそんな体力もないのだそうだ。

そして「無用な不安はお捨てなさい」と勧める。
さらに、「もういい加減、何かというと「経済」でソロバンをはじくのはやめないか」と主張する。

「外国のことなんか考える余裕はない。日本の国内を立て直す。格差というものを減らし、不安というものを軽減するような社会を作るのに手一杯で、それを悪いこととは思えない」と、世界に向けて公言してしまったほうがいいんじゃないかと思う。


そのほか、「無常」という考えを諦観としてではなく、プラスの意味で考えようという瀬戸内寂聴さんの言葉や生活の些事からモノを考える小説家の目線を忘れないようとする曽野綾子さん、やや時代錯誤的な阿川弘之さんなど、いろんな人の考え方が読めるのが楽しい本です。

(ふ)
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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    3,「あぜ道のダンディ」
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    5,「冷たい熱帯魚」

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2009年映画ベスト10
    3、リミッツ・オブ・コントロール
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