「逆立ち日本論」 養老孟司 内田樹

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養老さんも内田樹さんも、「われわれはおばさんの語りだ」という話で始まる。日本論を含めて縦横無尽に様々な事象について語られる興味深い対談だ。「おばさん語り」とは、身体感覚的であり、論理がふらふら揺れ、おじさんは頑固だけどおばさんは頑固じゃなくて、「そうそう」と頷いてさえいれば、話は水平方向につながっていくと内田氏は語る。男性的思考は論理的に垂直方向だけど、女性的おばさん的思考とは、水平方向なのだというのは納得だ。女性の井戸端会議は、いつだって話が横滑りしていきながら延々と続く。逆に言えば、男性のように論理的、演繹的につながっていかない特徴がある。

そして、ユダヤ人問題から、養老さんの『唯脳論』まで話がつながっていく。

自己同一性とは「寝る前の私と起きた私は同一である」ということを自明とすることで成り立っている。
「昨日の私」と「今日の私」は「別のものだけど同一である」というつじつま合わせができるものだけが「時間」という概念を持つことが出来る。

内田氏は武道的な考えから、「敵を倒す」のではなく、「敵を作らない」ことを説く。敵が目の前に現われたら、その敵が出現する以前の状態に戻ろうとするのではなく、敵の存在を勘定に入れて生きるのだ。僕がいて、敵がいて、二人が対峙しているのではなく、もう二人が出会ってしまった以上、「複合的身体」として、僕と相手と共に含む「第三の身体」として考えると言うのだ。複合的身体として構造的にコントロールする方法をみつければいいのだ。

だから相手を全否定するような「怒りっぽい人」は信用しないと言う。問題は簡単に解決などしない。
養老氏も「死ぬまでにとても片付かない問題が多い」と指摘する。内田氏は「デスクトップに並べておく」のだそうだ。問題が増え続けていても、片付けないで考え続けることの重要性を説く。「デスクトップに並べながら」考え続けるのだ。「未整理ファイル」としてファイルに入れてしまったら、もう考えなくなる。
養老氏も「開いておくべき疑問=オープンクエスチョン」の重要性を指摘。

黒澤明の『羅生門』は、英語で「RASHOMON」と表現されるそうだ。「藪の中」、解決しない問題。誰が真犯人かわからないミステリーは、アメリカでは成立しない。
西洋では「正解は一つ」の世界だけれど、「正解なんて一つじゃない」。とりあえずの「正解」があるだけだ。時代によって「正解」もまた変わる。「公正・客観・中立な報道」というのもあり得ないように、特権的な位置など存在しない。ある一つの視点でしかないと言うことだ。

あらゆることは「フィクション」であり、「カギかっこに入れる」。そんな風に「カギかっこに入れること」で、「オープンクエスチョン」として問題を論じる自由な視座が確保されると言うのだ。「憲法改正」問題も、護憲か違憲か、どちらかが正しいという絶対的な対立ではなく、どうやったらその対立を超えて議論が出来るかを考える必要があるのだ。


(さ)
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