感情表現と多様性の魅力

海江田経産大臣の涙について、内田樹氏が興味深い意見をブログに載せていた。

内田樹の研究室 感情表現について
(興味ある方はこれを読んでください)

簡単に抜粋すると・・・

感情とは、心の内面にあって、それを身体表現に外化することではない。例えば、「怒り」という感情は、怒っている人間の表情や声の出し方や身ぶりを模倣することによって内面化し、学習される。
他人の身体表現の模倣に熟達するにつれて、子どもたちの感情は深まり、多様化する。

感情とは、観客の必要な社会的記号だと言うのだ。
自分の内面には「そんな感情」がなくても、それを演じているうちに「そんな感情」が自分のうちにも、自分を見ている人のうちにも生まれてくるのである。
だから、他人の内面をダイレクトに操作しようと願う人間-つまり、「政治的な人間」-は、演技的な怒りや演技的な悲しみや演劇的な苦悩に熟達するようになる。

石原慎太郎や橋下大阪府知事の「怒り」は、衆人の耳目を最優先させる戦略なのだ。共同体において「怒っている人をそれ以上怒らせないこと」は、共同体の安全のための人類学的ルールなのだ。

そこから「子どもらしく/大人らしく」「男らしく/女らしく」ふるまわなければならないという社会的規範がどれほど人の心を抑圧し、傷つけているかについて、私たちは飽きるほど聴かされてきたという話に展開する。

「らしく」の呪縛からの解放が必要だと僕も考えてきた。規範から自由になり、「自分らしく」あればいいのだ、と。確かにそういう抑圧的側面もあるだろう。だけど、「らしさ」を身につけることで「感情の成熟」が出来る。身体表現や思考が多様化し、深められるのだ。

「感情の学習」を止めて、「自分らしさ」の表出を優先させてゆけば、幼児期に最初に学習した「怒り、泣く」といった「原始的感情」だけを選択的に発達させた人間が出来上がる。

つまり「感情を抑制できない」人が増え、「過度に感情的であることの利得」を得ようとする人たちが増えるのだ。そして「大人のいない社会」になるのだと内田樹氏は指摘してる。


ここから僕は、先日の「アンドロイド演劇」の平田オリザ氏と石黒浩氏の対談を思い出す。

「演じ分けること」・・・このことこそ人間の豊かさであり、その総体として「自己」があるのだ、と。「男らしさ」「父親らしさ」「上司らしさ」、それ以外にもいろんな顔があっていい。時には意外な顔も。それぞれのシチュエーションで、その役割を演じ、それぞれの感情を熟成させていく。その多様性こそ、その人の魅力ではないのか。
貧しい人ほど一面的だ。いろんな「顔」を持っている多様性にこそ、その人の魅力があるような気がする。
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