「宵待草」 神代辰巳

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昔大好きだった映画を再び見た。懐かしかった。なぜこの映画に惹かれたのか、改めて見るとよくわかる。それは何かを求めて移動しながら彷徨い続ける夢見る遊戯の身振りに惹かれるのだ。

神代辰巳+長谷川和彦+細野晴臣という奇跡的な組み合わせのトンデモナイ映画です。これは、<つぶやき&鼻歌ミュージカル>という奇妙なスタイルの画期的な冒険映画であり、荒唐無稽な青春活劇であり、アメリカン・ニューシネマへのオマージュでもある。

ショーケンこと萩原健一がぶつぶつ呟き「♪エンヤトット」と歌い続ける青春の鬱屈を描いた傑作「青春の蹉跌」(1974)でコンビを組んだ長谷川和彦の脚本で、再び神代辰巳が監督したこの映画は、実に軽やかで叙情的なロマンチックな青春活劇になっている。長谷川和彦らしい荒唐無稽なスケールのアナーキストたちの無為な物語だ。

時は大正時代、二人の無政府主義者の若者と、彼らに誘拐された右翼の黒幕の令嬢との奇妙な三角関係を描いた逃亡劇。馬に車に汽車。そして大きな気球。最後は船で果てるまで、ありとあらゆる乗り物が登場し、3人の登場人物は逃げ続ける。鼻歌を歌いながら、踊りながら、軽やかな身振りで。テロや抗争劇、令嬢の誘拐、そして銀行強盗。あらゆることをまるで途中で立ち合う映画撮影の遊びのように、軽やかに繰り広げる。人生は思い悩み止まるのではなく、何かをしながら動き続ける遊戯だとでも言うように。ラストの高橋洋子の孤独なでんぐり返しこそ象徴的だ。僕らは彼女のようにでんぐり返しをただし続けているのかもしれない。意味もなく、ぐるぐると回り続けているのだ。戯れに。

高橋洋子の初々しい肉体が輝いている。そして、セックスしようとすると頭が痛くなる高岡健二は、まるで「俺たちに明日がない」のボニー&クライドの性的不能者クライドのようだ。また、男2人と女1人の三角関係の銀行強盗の果ての逃亡劇は「明日に向かって撃て」のロバート・レッドフォードとポール・ニューマンとキャサリン・ロスの3人のようでもある。高岡健二と夏八木勲のハンチング帽姿がなんだか似ている。

同時録音ではなく全編アフレコで、撮影した映像に音(セリフや歌)を後から入れているので、口と音がピッタリ合っていなかったりするのだが、あのつぶやきと鼻歌こそこの映画の実験的な真骨頂だ。まさに<鼻歌ミュージカル映画>なのだ。ほとんどの場面で「宵待草」をはじめ様々な唄がぼそぼそと歌われている。移動しながら歌い続ける3人。ふざけて踊り続ける3人。神代辰巳の映像は、人物描写をカットで切り返すのではなく、引きの画面で長廻しをしながら人物たちをワンカットで撮り続ける。アップやバストショットはほとんどない。だから口がセリフや歌と少々合っていなくてもあまり気にならないのだ。

そして、細野晴臣がティンパンアレーのメンバーで曲をつけていく。「漂流記」という曲だ。
細野晴臣「漂流記」(「宵待草のテーマ)

この映画は、無為感が漂いながらも何かを求めて彷徨い続けるロマンチシズム溢れる青春映画の愛すべき作品だ。



製作国:1974年日本映画
配給:日活

監督: 神代辰巳
脚本: 長谷川和彦
撮影: 姫田真左久
美術: 横尾嘉良
音楽: 細野晴臣
キャスト: 高橋洋子、高岡健二、夏木勲、青木義朗、芹明香

☆☆☆☆☆5
(ヨ)
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テーマ : TVで見た映画
ジャンル : 映画

tag : 青春

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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