「十二人の怒れる男」ニキータ・ミハルコフ

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シドニー・ルメットの息詰まるような密室劇とも
三谷幸喜・中原俊の「12人の優しい日本人」とも
違うニキータ・ミハルコフのロシア版は、チェチェン紛争という現代ロシアの政治的背景を描きつつ、演劇手的な大げさな身振りで時に笑いを誘いながら、カルカチュア(戯画化)された馬鹿な人間たちを描いている。

だから議論の展開には、全く説得力がない。
え~~?そんなんで、無罪に変わっちゃうの~?という感じで、徹底した議論というより感情にまかせた言い合いや、身の上話が主となっている。

印象的な少年のチェチェン人としての重い現実を映像で重厚に見せながら、体育館の中で行われる陪審員たちの議論は、どこか滑稽で人間喜劇の様相を呈している。
だから、この映画はその馬鹿でいい加減で、自分勝手で曖昧で、差別主義者だったり、マザコンだったり、生活破たん者だったり、くるくる意見がすぐ変わる人間たちの愚かさを笑って楽しめばいいのである。

ニキータ・ミハルコフの演出は、そこがうまい。
喋りながら、鼻薬を目や耳にまで入れる男や、無意味に鳴る目覚まし時計や、鞄のカギを探すのも大騒ぎ、バスケットボールで喧嘩になリ、カフカス地方出身の外科医は、ナイフを振り回して得意気に踊り出し、マザコンTVマンは怯えさせられ吐いたあと香水ふりかけて笑い出すし、果ては夢精男まで登場して、なんだか人間動物園のよう。停電や鳥などもうまく使いながら、あくまでも演劇的に大げさに展開していく。リアリティではないのだ。

各人の身の上話も唐突でそれぞれ始まるが、それも演劇なのだから。飲んだくれて死のうと思っていた男が、電車で「ママ怖い。変な人がいる。」「変な人じゃないのよ。悲しいだけなのよ」という話が一番グッときました。笑いたい観客ばかりだという演劇人の話や自分のベルトで笑いながら首つりしようとした息子の話など、身につまされる。

真実をめぐる議論というよりも、情に重きを置いた意見の披露、無罪でも刑務所の中の方が安全などという話まであり、法そのものよりも大切なことを描こうとしたこれは人間喜劇だと思う。 

☆☆☆☆4

(シ)
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テーマ : ヨーロッパ映画
ジャンル : 映画

tag : 社会派

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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