「あぜ道のダンディ」石井裕也

ダンディ

「川の底からこんにちは」で俄然注目された若手監督・石井裕也。女優・満島ひかりと結婚したことでも話題になったが、この作品も彼の力がキラッと光る佳作だ。なんていったって主演が三石研なのだ。この地味なキャスティングで映画を成立させてしまうのだから凄い。しかも面白いのだ。これは、世の父親たちに捧げる応援歌であり、僕も父親なので思わず、共感して涙してしまった。

彼のオリジナル脚本であるところも素晴らしい。セリフのやりとりのセンスがいいのだ。なかなか笑えるテンポと間合いのセリフ。苦虫を噛み潰したような無愛想な中年男・宮田淳一(光石研)と親友真田(田口トモロヲ)とのやりとりがまずいい。最初の場面の仕事仲間の藤原竜也の呼びかけに無視し続ける光石研の演出から見事だ。そして、小道具の帽子の使い方もニンマリしてしまう。さらに息子や娘たちとの会話、やりとりにも面白さがある。「お父さん、安月給なのに・・・私・・・」と自分の不甲斐なさに涙する妹。そんなに「安月給、安月給言うな」とたしなめる兄。この場面はとてもいい。実の娘には何も言えないのに、援助交際するよその娘には説教できるあたりにも笑える。(「跳べ、メス豚、跳べ!」)

この映画は、そういうセリフのやりとりの面白さがすべてだ。決して劇的な展開の物語があるわけではない。クスッと笑えるセンスが絶妙なのだ。クライマックスのウサギのダンスもいい感じだ。

田口トモロヲがとてもやさしい気の弱い友を演じていて、素晴らしい。このキャスティングで、このレベルの映画を撮れてしまう石井監督の手腕には脱帽だ。ダメ男、ダメ女を描くのがとても彼はうまい。そのどん底ぶりを笑いに転化させて、人間そのものの魅力を引き出し、観客に共感させてしまう演出力・描写力は見事な力だ。人と人との関係、間合いを描くのがうまい監督なのだ。


製作国: 2011年日本映画
配給: ビターズ・エンド
監督・脚本: 石井裕也
撮影: 橋本清明
音楽: 今村左悶、野村知秋
主題歌: 清竜人
キャスト: 光石研、森岡龍、吉永淳、西田尚美、田口トモロヲ、山本ひかる、染谷将太、綾野剛、螢雪次朗、藤原竜也、岩松了

☆☆☆☆4
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