「ツリー・オブ・ライフ」 テレンス・マリック

ツリー


実に大袈裟な映画である。暗黒の炎。天地創造。海から誕生する生命の起源。恐竜まで登場する生物の進化の歴史がCGで再現され、そしてある家族の物語が描かれる。

はっきり言って面白くない。宗教感を観念的に映像化したような作品。神への問いかけ。そして謙虚さを失った人間たちへの警告。ストレートなメッセージである。ただそれだけである。


旧約聖書のヨブ記38章の4節「わたしが大地を据えたとき おまえはどこにいたのか」と、7節「そのとき、夜明けの星はこぞって喜び歌い 神の子らは皆、喜びの声をあげた」が引用される。母は神に問いかける。「生き方には二つある。世俗に生きるか、神に委ねるか。どちらかを選ばなくては」。

水のイメージが頻繁に登場する。生命誕生の海、クラゲや藻、光射す海。流れ落ちる勢いのある滝の水。静かな川。庭での芝にまかれる水。水に素足を濡らす母。子供が溺れ死ぬ水。聖水。天国に召される人々と海。生と死が深く関わっている水のイメージ。

父権性の暴力。権力や名誉や金。ブラッド・ピットもすっかりオヤジ臭い。そんな世俗にまみれた父親を演じ、ジェシカ・チャステイン演じる母は愛情深く、神に感謝し子供たちを愛している。水との戯れが、そんな母の神との親和性を象徴している。そして3人の息子達。長男のジャックが大人になって(ショーン・ペン)、大きなビルの一室で金と権力を手に入れ、成功しつつも空しさを覚える。父に反発しつつ、父と同じ道を歩んでしまった・・・。
「なぜ、あなたに背を向けたのか、道に迷い、あなたを忘れていた」。

ジャックが、性に興味を持ち、暴力に目覚めていくあたりはちょっとスリリング。車の下で修理する父を一瞬殺そうと思う息子。弟を苛め、あやまる場面など、自らの暴力衝動と葛藤が描かれている。男の子が持っている権力志向や競争意識、暴力性。その繰り返しの歴史。そして、父は仕事で失敗し、一家が引越しをする場面で終わる。

弟は命を奪われる(その理由は明らかにされないが)。「神は全てを与え、全てを奪う」。それでも神を信じ、神への問いを続ける。背を向けるのではなく、受け容れ、傲慢にならずに神を信じ、謙虚に生きること。まぁ、そんなキリスト教的世界観を示した単純なメッセージ映画である。

ちなみに「生命の樹(THE TREE OF LIFE)」とは、旧約聖書の「創世記」のエデンの園に登場するものとは違うものとして使われていると推測される。エデンの園では、知恵の樹と生命の樹があり、生命の樹はその実を食べれば永遠に生きられるとされるのに、人間は神に禁じられた知恵の樹の実を食べた。知恵の樹の実によって善悪を知るようになった人間は、生命の樹の実まで食べて、永遠に生きることのないよう神からエデンの園を追放されてしまう。

この映画では、そういう神が世界を造った・・・というキリスト教的世界観ではなく、宇宙のビッグバンと海の中の生物の誕生、恐竜の時代など生物の進化の歴史である進化論の説明映像が使われている。ツリー・オブ・ライフの生命の樹とは進化論的なツリーのことだ。つまり、進化論とキリスト教的世界の融合がこの映画ではなされているのだ。だから、キリスト教原理主義者からは、この映画は当然批判される。

生命の進化の歴史と神への信仰。そのすべてを受け入れつつ、そのツリーの連なりの一端である人間(自分)という存在。その頂点にはやはり神の存在があり、世俗的にならずにその連なりを意識することで謙虚に生きることが出来るという映画だ。



製作年 2011年
製作国 米
原題 THE TREE OF LIFE
監督: テレンス・マリック
脚本: テレンス・マリック
撮影: エマニュエル・ルベツキ
音楽: アレクサンドル・デプラ
キャスト: ブラッド・ピット、ショーン・ペン、ジェシカ・チャステイン

☆☆☆3
(ツ)
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : 家族

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No title

『ツリー・オブ・ライフ』は未見です。
あまり映画評を聞き過ぎて退いてしまった感もあります。
DVD視聴になってしまうかもしれませんが…

キリスト教らしい世界観が、日本人にはちょっと受け入れ難いところもあるのかなー
2006年公開の『ニュー・ワールド』が良かっただけに。

これまた未見なのですが、73年の『地獄の逃避行』というロード・ムービーを一度見てみたいです。
古き良きアメリカを現した映像の方が、何も考えずに受け入れ易いと思います。

Re: No title

*にゃんたろうさん
う~ん、僕はこの映画、好きになれませんでした。もちろん美しいいい場面はあるのですが。テレンス・マリック監督は、実は僕は1本も観ていないので、あまりエラそうなことは言えません。映像派の人なんでしょうけれど、宗教的メッセージが強すぎたからかもしれません。

同じ宗教的世界観(ユダヤ教)が表れているコーエン兄弟の「シリアスマン」はとても興味深かったけれど。

映画(映像)がメッセージの道具になっているような感じがしました。
プロフィール

Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
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オヤジです。
映画にまつわる雑文です。
2006年からの映画レビュー。
それから、本の感想を少し。


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