演劇「わらいのまち」東京セレソンデラックス

演劇の感想である。札幌で芝居を観ることは少ない。地元の劇団公演をたまに観ることはあるくらいで、なかなか東京の注目されている劇団が札幌で公演する機会は少ない。まことに残念なことである。だから今回のような実力派劇団が札幌で公演してくれることはうれしい。

東京セレソンデラックスは、去年初めて観た。「泣ける劇団」として人気だという噂を聞いて「くちづけ」という芝居を観た。その巧さに驚いた。知的障害者という難しいテーマを扱いながら、お涙頂戴ではなく見事な笑いと涙の芝居として成立しているのだ。知的障害者として描かれる人間がとても魅力的で、その距離感が実に素晴らしいのだ。僕は、宅間孝行は「フーテンの寅さんだ」と思った。道化者としてまわりに笑いを提供しつつ、親子の人情話で泣かせる物語、そして役者としての力量とチャーミングさ、そのテクニックは見事だった。

そして今回は「わらいのまち」。「笑い」に徹したノンストップコメディだという。またしても「寅さん」だった。三谷幸喜的なワンシチュエーションのドタバタ劇と山田洋次の「寅さん」の人情話がミックスされたような舞台。

寂れた田舎町の温泉旅館のロビーが舞台である。この舞台の一幕だけで、ここまでのシチュエーションコメディが書けてしまう宅間孝行の才能はこれからもっと注目されるだろう。東京セレソンDXは、かつてTBSドラマで「歌姫」がドラマ化され話題になったようだが、僕は残念ながらそのドラマは見なかった。

登場人物のすべてのキャラクターをそれぞれ見事に物語を作りつつ、次々と起こる勘違いから話がややこしくなっていく人物模様のドタバタ劇。三谷幸喜もこのようなシチュエーションコメディが巧いが、この田舎の温泉町の人々の勘違い振りぶりは笑える。「あの男が帰ってくる!」という騒動から始まるところは「寅さん」とおんなじ。ところが「あの男」は、それほど恐れるほどの凶悪者ではなく、ただの気のいいアンちゃん。前半こそ、展開がややもったりとした印象だったが、後半になるにつれて笑いの渦に引き込まれ、一気に最後まで飽きさせることなく引っ張ってくれた。老若男女、演劇ファンだろうが演劇を観たことがなかろうが、どんな人でも楽しめる一級品のエンターテインメント芝居になっている。

演劇には、毒のある芝居や社会性やメッセージ性があったり、祝祭的だったり、挑発的なものや観念的だったりするさまざまな芝居がある。僕もこれまで様々な芝居を観てきた。どちらかというと「なんだろうこれは?」と驚かされたり、考えさせられたりする芝居を多く観てきた。

ただ東京セレソンデラックスは、徹底したエンターテイメントだ。観客を笑わせ、泣かせることに徹している。そこがこの劇団を誰にでも勧められる所以である。

作・演出 宅間孝行
キャスト 宅間孝行、岡田義徳、田畑智子、柴田理恵、片桐仁ほか
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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