「大人は判ってくれない」フランソワ・トリュフォー

大人        
フランス・ヌーヴェルヴァーグの出発点になったとても有名な映画である。以前に観た記憶はあるのだが、実はあまり印象に残っていなかった。そんな有名な映画なのだからさぞかし面白いんだろうと思ったけれど、実はそれほど面白くなかったのだ。

あらためて久しぶりに見てみた。なるほど、今見るとやっぱりそれほど凄い映画とは思えない。ただフランソワ・トリュフォーがその後に撮ってきた映画の原点がやっぱりここにあるんだなぁという気がした。愛を探し求めている永遠の映画少年なんだね、彼は。

ヌーベル・バーグは、このトリュフォーの長編第1作『大人は判ってくれない』が評価され、クロード・シャブロルの『いとこ同士』、そしてジャン=リュック・ゴダールの傑作『勝手にしやがれ』が誕生した。僕は、この「勝手にしやがれ」が大好きだ。躍動感に溢れた街を舞台にした映画の永遠の傑作だと思う。

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それはそうと、フランソワ・トリュフォーである。僕は彼の作品の中では『突然炎のごとく』が一番好きである。まぁ、この映画については、別の機会に書くとして、愛を探し求めた映画少年、トリュフォーの分身のジャン・ピエール・レオが出演し続けた「アントワーヌ・ドワネル」ものが、最もトリュフォーがトリュフォーらしく輝いていた作品群だと思う。

『大人は判ってくれない』で、両親から愛を受け取れなかったドワネル少年は、ひたすら自己愛を貫きながら、愛を求めて恋をし続ける。『アントワーヌとコレット/二十歳の恋』(62)では、音楽会で恋に落ち、彼女の近くのアパートに引っ越してしまうストーカーぶりだ。『夜霧の恋人たち』(68)、『家庭』(70)、『逃げ去る恋』(78) が「アントワーヌ・ドワネル」ものだが、あらためてもう一度全部観てみたい気がする。

トリュフォーの映画はいつだって「愛」が主題だ。それは、この『大人は判ってくれない』という両親から見捨てられた愛がその出発点なのだ。先生からも冷たい仕打ちをされ、母の浮気現場のキスを目撃し、祝福されずに自分が産まれた出自を知り、バルザックの文章を暗記するほど感激して作った作文を、ただ盗んだと教師になじられ、学校をサボった理由を「母が死んだ」と嘘をつき、父に殴られ、家出をし、朝まで街を彷徨い、タイプライターを盗んで見つかり、少年鑑別所に送られる。一度だけ家族3人で夜に仲良く映画を見るシーンがとてもせつない。映画館帰りの車の中での3人の幸せそうな笑顔。

この映画の内容は、トリュフォー自身の自伝でもあるそうだ。叔母に預けられ、家出を繰り返し、少年院で過ごした幼少時代。映画館だけが彼の孤独と寂しさを癒す場所だったそうだ。

そして、ラストの海への疾走。これはとても印象的に長い長い移動撮影だ。この海への少年の走りをずーっと見せるところは、映画史に残る名シーンだというのはよくわかる。この両親に見捨てられた少年の孤独を、安易な物語で救うのではなく、ただ走らせたところにこの映画の魅力はある。

幼少時に奪われた愛は、ずっと愛されたくて少年のように誰かに恋焦がれ続ける。そして理不尽なほどの冷たい現実。そして迷い。その孤独と寂しさと自己愛がフランソワ・トリュフォーの基調低音だったような気がする。

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体育の教師が街で子供たちを歩かせるシーンで、子供たちが一人、また一人といなくなる場面の俯瞰、家出して街をうろつく夜や朝、護送車で送られる少年と夜の街など、印象的な場面はいろいろある。白黒画面が美しい映画である。

尚、逃げた子犬を追いかける女性はジャンヌ・モロー。「よせ、子供は」と言って彼女の後を追っていく男性はジャン=クロード・ブリアリ。「お迎えの馬車が来たぞ」と叫ぶ警官はジャック・ドゥミ監督。ヌーヴェルヴァーグ仲間のカメオ出演している。

学校を舞台にした少年たちの美しき傑作映画、ジャン・ヴィゴ監督の『新学期・操行ゼロ』がもう一度見たい。


製作年 1959年
製作国 仏
原題 LES QUATRE CENTS COUPS
監督: フランソワ・トリュフォー
製作: フランソワ・トリュフォー
脚本: フランソワ・トリュフォー、マルセル・ムーシー
撮影: アンリ・ドカエ
音楽: ジャン・コンスタンタン
出演: ジャン=ピエール・レオ、クレール・モーリエ、アルベール・レミー、ジャン=クロード・ブリアリ、ギイ・ドゥコンブル

☆☆☆☆☆☆6
(オ)
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    3、「演劇1&2」
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    5、「アウトレイジビヨンド」
    番外 「ヒミズ」


2011年映画ベスト10
    3,「ブルーバレンタイン」
    4,「愛する人」
    5,「クリスマス・ストーリー」
    6,「トゥルー・グリット」
    7,「SOMEWHERE」
    8,「さすらいの女神(ディーバ)たち」
    9,「エリックを探して」
    10,「シリアスマン」
    次点,「エッセンシャル・キリング」

    3,「あぜ道のダンディ」
    4,「マイ・バック・ページ」
    5,「冷たい熱帯魚」

    2010年映画ベスト10
    3、フローズン・リバー
    4、アンナと過ごした4日間(2008)
    5、Babble/バブル(2005)
    6、パリ20区、僕たちのクラス
    7、クレイジー・ハート
    8、ずっとあなたを愛してる
    9、千年の祈り
    10、シルビアのいる街で
    次点、闇の列車、光の旅

    3、川の底からこんにちは
    4、さんかく
    5、ノルウェイの森
    次点、乱暴と待機


2009年映画ベスト10
    3、リミッツ・オブ・コントロール
    4、あの日、欲望の大地で
    5、人生に乾杯!
    6、ウェディング・ベルを鳴らせ!
    7、チェンジリング
    8、ロルナの祈り
    9、レスラー
    10、夏時間の庭

<日本映画>
    1、ディア・ドクター
    2、空気人形
    3、ウルトラミラクルラブストーリー
    4、インスタント沼
    5、ノン子36歳(家事手伝い)
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