経済効率化とTPPと大切にすべきもの

ヨーロッパの旅番組などの映像を見ていると、必ず出てくるのがマルシェのような市場だ。新鮮な野菜が昔どおりに対面販売で売られている。ヨーロッパでは、地元の食材を守る食文化が維持されているんだなぁと思う。

一方アメリカなどの先進国では、経済効率を求めて、巨大スーパーが流通に大きな役割を担っている。経済効率優先の時代、果たして食料もまた効率化を推し進めればいいのだろうか。人件費を削減し、遺伝子組み換え作物を推進し、手間がかからない農業を模索する。農業も工業のように大規模化、機械化を進め、流通の効率化をはかれば対面販売のマルシェや手作りの野菜などなくなるだろう。大量生産、大量消費の一律な食品。

しかし、一方で健康ブームのなかで、有機栽培も付加価値を高めて見直されている。ほとんどの大量消費農作物と一部の富裕層のための値段の高い健康にこだわった手作り農作物。でも庶民にとっては、日々安いものを買わないと生活できない。

何を食べているのか知らないことは、やっぱり怖い。食べることは生きることと密接に関わっている。毎日食べる食料は、安ければいいというものではない。効率化だけで、食の問題を考えるべきではないのは自明だ。そして、国民の食料を確保することは国の責任だ。安全保障的観点から考えないと、30億に達した人口増加、水害や干ばつなどの気候変動による飢饉など世界的食糧難問題と日本は無縁ではない。

TPPのことがとても気になる。なぜ推進派はアメリカ追随ばかりするのだろうか。日本の食料の安全保障は確保されるのだろうか。アメリカよりも日中韓の自由貿易協定やEUとの貿易協定の方が、日本と立場が近いだけに交渉の意味はあるのではないだろうか。アメリカは雇用と輸出を増やしたいだけだし、TPPに加盟しても日本の輸出産業がそんなに増えるとも思えない。安全や環境保護など、さまざまな規制がアメリカ基準になるだけだ。非関税障壁といわれる規制が取り払われ、アメリカ基準でどんどん輸出攻勢をかけてくるのは目に見えている。保険や金融もルールが変わっていくだろう。グローバル化といいながらも、強いものの価値基準を押し付けられるだけではないか。

日本の農業は、稲作、小麦、ビート(砂糖)、大豆などの土地利用型農作物は、アメリカやオーストラリアのような巨大な大規模農地がある国とでは勝負にならない。狭い日本の農地では効率化に限界がある。また、牛肉、乳製品などにも大きな影響がでる。それらの農家がみんな野菜農家に変わっても、値崩れが起きるだけだ。そして主食である米や多くの農産品が外国からの輸入に依存する率が高くなる。

もちろんJAの体質や補助金依存体質からの脱却、後継者問題も含めて日本の農業の抜本的改革は必要である。国際競争力を高め、付加価値を高める努力はもっと必要だ。その議論とTPPを一緒に論じるべきではない。問題は、どうすれば自由貿易を進めながら、農業を守り、発展させていけるかだ。消費者が、高くても国産の農産物を買い支えられるかの意識の問題もある。その差額を国がどこまで埋められるか。

アメリカで、いま、地方の新聞がダメになっているらしい。地方都市で取材空白地帯が生まれているという。広告費が地方新聞では削減され、地方都市の記者が消えている。だから官庁などチェック機能が低下しているという。地道に取材活動をする記者は、ネットでは育っていないらしい。ネットは、どちらかというと新聞やテレビが伝えたことを広めることや口コミの拡散が得意だ。メディアの基本は地道な取材活動であることに今も昔も変わりはしない。

自由競争、経済効率化がすべて正しいのだろうか。経済格差拡大が社会問題化する中で、資本主義社会の行き詰まりがあちこちで指摘されている。

効率化だけではない地域のあり方、地域で必要な食やエネルギーやメディアのあり方を考えること。自由という美名の下に誤解されている「自由貿易」の落とし穴に、そろそろ気づく時が来ているのではないだろうか。先進国では少なくとも、経済規模がこれ以上発展しないところまで来ている。人口は増えない以上、消費は減り、経済は縮小していくばかりだ。ヨーロッパもアメリカも日本も同じだ。

経済という意味では、中国やインドなど新興国の市場拡大に、どうやって関わっていくか、そこにしか発展の道はない(ベトナムへの原発輸出など論外だ!)。一方で、経済発展ばかり追いかけるのではなく、地域の社会に合った仕組みづくりが求められているはずだ。

一方、中国の競争社会は凄いと聞く。学歴、偏差値など徹底したスパルタ教育を推し進め、海外に出て行ける人材育成に躍起だ。そして、拝金主義はすさまじく、袖の下といわれる賄賂が横行していると聞く。メディアでさえ、お金をもらって取材を取りやめることもあるらしい。金こそすべての世界だ。

中国人は強くたくましい。最近テレビでよく見かける中国でのブログが大人気の日本人青年の話によると、中国人は他人を気にしない。自分のことばかりだという。だから格差についてもそれほど気にしていないのだという。自分さえ良ければよくて、他人はどうでもいいのだ。だから、日本のようなイジメや陰湿な無視はないらしい。一方でケンカは激しいと言う。怒鳴りあいのぶつかり合い。自己主張が強く、競争心や対抗心を燃やし、見栄を張るのだという。話を聞いていると、とても日本人では太刀打ちできないような気がする。そんなしたたかな中国とどう付き合っていくのか、これからの課題だ。

世界はグローバル化し、ギリシャの債務危機によるヨーロッパ問題も、アメリカの不況と格差問題もタイの洪水も、中国やインドなどの出来事もすべて日本と関わっている。自由化の流れは押し留められないかもしれない。グローバル化され、より緊密につながり、狭くなった世界。しかし、市場や国家に過度に依存しない、地域のつながりのある社会を目指し、守るべきもの、大切にすべきものを見失わないようにしないと、すべては均一化され、強いものばかりが生き残る社会になってしまうかもしれない。
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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    7,「SOMEWHERE」
    8,「さすらいの女神(ディーバ)たち」
    9,「エリックを探して」
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    次点,「エッセンシャル・キリング」

    3,「あぜ道のダンディ」
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2009年映画ベスト10
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