「愛の勝利を ムッソリーニを愛した女」マルコ・ベロッキオ

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ヒトラーと並ぶ独裁者と称され歴史に名を残したベニート・ムッソリーニを、自分の人生をささげてした実在の女性の半生を描く人間ドラマ…。密度の濃い映画になっていて素晴らしい。特に主演のジョヴァンナ・メッゾジョルノの強い眼差しが美しい。孤独で強い意志の眼差し。

歴史の闇に葬られた女の人生。ムッソリーニをした女の壮絶なの物語。そう言いながらも、このの物語は、二人のの言葉は交わされない。を囁き合うシーンがない。彼女の一方的な眼差ししかないのだ。

冒頭の政治集会で「神に5分間あたえる、5分後わたしが生きていれば、神は存在しない」という無神論的挑発パフォーマンスをする社会主義者の男ムッソリーニ。そんな彼を熱い視線で見つめる女イーダ。そして、警官隊に追われるムッソリーニを助けて、二人の関係が始まるが、そこに会話はない。彼女の熱い視線があるだけだ。ムッソリーニとの無言の口づけ、そしてセックス。夜、街宣車が「戦争が始まった」とビラが配られると、足早に彼女のもとを去っていく男。ムッソリーニが彼女イーダ(ジョヴァンナ・メッゾジョルノ)を愛していたかどうかはわからない。そして、イーダはムッソリーニとの間に子供を身ごもり、息子にムッソリーニと同じ名前ベニート・ムッソリーニと名付ける。愛は一方的なものにすぎなかったのか、実際にはわからない。

そう、これは二人の愛の物語ではなく、一方的にムッソリーニを愛した女の物語だ。そしてムッソリーニに存在を消された女。長い間、精神病院に幽閉され、息子もまた精神病院で狂って死んだという史実。ファシズムという時代の中で圧殺された女。彼女はムッソリーニと教会で結婚したと主張するが、それさえ事実かどうか分からない。ムッソリーニには正式な妻と子供たちがいた。映画でも結婚シーンは描かれるが、それは彼女の幻想でしかなかったのかもしれない。


「あなたはひとりでファシズムや国と戦おうとしている。」と精神科医に言われるイーダ。これは時代に圧殺された一人の女の視線の物語なのだ。言葉を奪われ、愛した男に全財産をささげ、愛の言葉は誰にも届かない。ムッソリーニの街頭演説のニュース映像が何度も挿入され、湧き立つ群衆が映される。彼女の言葉は、それらの映像に阻まれるかのように、誰にも届かない。映画の中でも、子供が出来てから、ムッソリーニに無視され続ける。

夜の雪が降る美しいシーンがある。精神病院の鉄格子によじ登り、イーダはムッソリーニや教皇、王などに宛てた幾通もの手紙を外に投げる。哀しくも美しいシーンだ。光が当たった雪は闇に輝き、シルエットになった鉄格子のイーダが哀しい。存在自体が影でしかなかった女。手紙も言葉も誰にも届かない。愛するムッソリーニだけではなく、息子にさえも。ファシズムという時代に圧殺されただけではなく、愛というものが幻でしかないという残酷さをも描いているようだ。

ファシズムの台頭というイタリアの大きな時代のうねりを、イーダの視線を中心に、ニュース映像を巧みに使いながら、届かなくなる声、彷徨い続ける愛の幻を追い続けた女の物語として描いたところが素晴らしい。時代が動き、存在は幻影となり、個は遥か遠くに消え、群衆の声が圧倒する。視線も声も時代に圧殺される。


英題:VINCERE
製作年:2009年
製作国:イタリア
日本公開:2011年5月28日
監督・脚本: マルコ・ベロッキオ
編集: フランチェスカ・カルヴェリ
音楽: カルロ・クリヴェッリ
キャスト:ジョヴァンナ・メッツォジョルノ、フィリッポ・ティーミ、ミケーラ・チェスコン、ピエール・ジョルジョ・ベロッキオ

☆☆☆☆☆5
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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2011年映画ベスト10
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    3、川の底からこんにちは
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2009年映画ベスト10
    3、リミッツ・オブ・コントロール
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<日本映画>
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