「ふしぎなキリスト教」 橋爪大三郎×大澤真幸(講談社現代新書)

聖書をちゃんと読んだことのない者にとって、キリスト教とは?という問いにちゃんと答えられない。いつも曖昧にしてきたところがある。西欧社会がキリスト教を基本にして成立していることは分かっていても、キリスト教そのものについてちゃんと理解していない。そこでこの本は、キリスト教信者ではない二人の社会学者からのキリスト教の本質についてのアプローチである。だから、素朴な疑問が続々と出てくる。それに対して、冷静に客観的に話されている。一部、キリスト教の立場からのこの本に対する批判もあるようだが、それも含めてキリスト教を理解するうえで、参考になる本だ。

以下は本を読んでの自分のためのメモです。

一神教は、たった一人しかいない神(God)を規準にして、その神の視点から、この世界を視ること。たった一人しかいない神を、人間の視点で見上げるだけじゃダメ。
多神教は、神から視るなんてことはどうでもいい。あくまでも人間中心。

一神教のコミュニケーションは、端的にコミュニケーションの不可能性。不可解なことも一方的に受けいれることが、神との正しい関係。試練として、受け止め乗り越えていく。

一神教は、この世界のすべての出来事の背後に、唯一の原因=Godがある。
責任者(God)は、意思であり、感情があり、理性があり、記憶がある。言葉を用いて人間の精神活動と瓜二つ。世界は「言葉」によって作られた。「光あれ」と言うと光があった。そして、意思してイスラエルの民を選んだ。自然現象は、Godからのメッセージ。Godとの不断のコミュニケーションが祈り。祈りを通して、解決が与えられ、赦し=Godと人間の調和した状態が実現する。祈りは対話。



血縁的であったり、地縁的であったりする、小さくシンプルな原初的な共同体が、自然と共生関係にあるようなときには、呪術や多神教が自然発生的に出てきます。しかし、異民族が侵入してきたり、多民族の帝国であろうとしたときには、こういう呪術や多神教の自然崇拝や特殊な習俗ではやっていけない。そこで、民族や部族を超えて妥当性をもつような普遍宗教・世界宗教が出てくる。仏教も儒教も一神教も、普遍宗教・世界宗教です。

一神教では、神は世界を創造したあと、出て行ってしまった。世界のなかには、もうどんな神もいなくて、人間が一番偉い。人間が神を信仰し、服従することは大事ですけれども、神がつくったこの世界に対して、人間の主権があるんです。・・・こんなことは、キリスト教徒しかやらないんです。
世界は神がつくったのだけれども、そのあとは、ただのモノです。ただのモノである世界の中心で、人間が理性をもっている。この認識から自然科学が始まる。こんな認識が成立するのは、めったにないことなんです。(P312)

キリスト教が、ユダヤ教やイスラム教と違うのは、いわば置き去りにされていることです、この世界に。



多神教の神様たちは、人間の仲間みたいなもので、多くの神様と仲良くすること。人間主義的であるのに対して、一神教は、神は人間ではない。宇宙の外にいて、人間を創造し、この世界を作った。神様の所有物としての人間と世界。その絶対的な神(God)が考えたとおりに行動することで、身の安全を守ってもらうための「契約」。

ユダヤ教とキリスト教の違いは、イエス・キリストの存在。ノアの箱船というGodの直接介入によって多大な処罰を受けた人類が改善せずにいる中で、Godの描くルール通りに行動しない人類の罪を究極的に解消するための装置としてイエスは存在した。

そしてイエス・キリストは、「愛」で神と人間のよそよそしい関係を変えようとした。
キリスト教だけが原罪という考え方がある。神に背いて、罪を犯さざるを得ない人間。
イエス・キリストを救い主だと受けいれた人は、特別に赦される。

磔刑にあったイエスには人類に対する復讐の資格がある。しかし、その復讐の資格をイエスが放棄するというキリスト教の論理は、人類全体を赦されるという契約の更新の意味合いを持たせている。したがって、人類にはGodと元々結んだ契約を充分に遂行していないという原罪があるが、イエスの磔刑と復活による契約の更新によって、人類全体が赦されるということになる。

イスラム教には宗教法がある。宗教法とは、世界にいる人間への神の配慮を言語化したもの。イスラム社会における優れた知識人は、宗教法の解明と発展を行おうと考え、新たに法律を制定するということは考えない。

それに対して、キリスト教には宗教法は存在しない。宗教法がないために、なにをすべきかどうかについての自動的な解答は存在しない。したがって、人々は途方に暮れ、いわばやむなく創意工夫を行って、神学や哲学、自然科学を用いてGodの創出した世界の論理を解明しようとする。

イスラム教は厳しい生活を律する宗教法があるため、新たな法を作ることができず、経済の変化に対応できなかった。しかし、キリスト教は宗教法がなかったために、人間主体の哲学や自然科学を作り出し、世界を解明し、新たな法を作り経済を発展させてきたのだという。

(ふ)
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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