「さすらいの女神(ディーバ)たち」マチュー・アマルリック

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今年とても楽しみにしていた映画だ。期待が大きすぎたせいだろうか。面白かったんだけどどこか物足りなかった。カサヴェテスのようにドキュメンタリー的に日常を切り取り、フェリーニのような女神たちと哀れな男の祝祭。

芸人たちの巡業ロードムービーだ。とにかくダンサーたちの存在感が素晴らしい。だって本物のダンサーたちなんだから、そこいらの女優では出せない肉体の貫禄が違う。圧倒的な肉体が、闇の中から現れる楽屋のファーストシーンが素晴らしい。鏡や光、そして彼女たちの振る舞い、それをカメラはじっと見つめ続ける。

そう、これは安易に作られた物語ではない。だから安易な感動も、これ見よがしな起伏のある物語もない。画面のちょっとした端っこや瞬間に、物語が凝縮して入り込んでくる。それを見逃すと、ただの凡庸な日常のエピソードにしか見えない。

トラブルを起こし全てを捨て逃げるようにアメリカに渡った、かつては敏腕プロデューサーだったジョアキム(マチュー・アマルリック)は、ショーの成功によって晴れてパリに凱旋するつもりだったのが肝心のパリ公演がブッキング出来ずに窮地に追い込まれる。

物語はこれだけだ。ジョアキムがどんなトラブルをかつて起こしたのか、彼がパリ公演にどんな思いがあるのか、それは、観客が想像するしかない。ジョアキムと子供たちの再会シーンに、彼の家族の物語を想像し、かつての仕事仲間を訪ねるシーンで、彼の過去へと思いをめぐらせるしかない。

家族に会いに行く途中の夜のガソリンスタンドで、女の子に「人を殺しに行くんだ」と声をかけるシーンはいい。大袈裟な物語を誇張して描くのではなく、物語と物語のすき間の日常のちょっとした場面から、物語を立ち上がらせるその力。どこでもBGMの音を下げさせるジョアキムの神経性は、どこから来ているのか、われわれは想像する。また、スーパーのレジで、おばさんが突然、昨夜のショーの興奮を語り出し、胸を見せようとして叶わず、モノを投げつけるシーンも笑える。そんなシーンのあとに、バーレスクダンサーのミミ(ミランダ・コルクラシュア)との関係が変わっていく。ヨーグルトを食べ、ミミの運転の助手席でくつろぐジョアキム。そして船で島に渡る場面は、もう恋人たちのようだ。

誰もいないシーズンオフの島のホテルでのシーンがこれまた素晴らしい。コトを終えたあとでのジョアキムの涙を見せ、バーレスクダンサーの仲間たちが砂地を歩いてくる場面は、フェリーニの映画のように美しく愛おしい。ジョアキムとともに巡業で彷徨い続ける踊り子たちは、まさしく擬似家族のようだ。空っぽのシーズンオフのホテルこそ、彼女たちの心の風景に相応しい居場所なのかもしれない。ただ、何かが物足りない。残念ながら、全体的にやや散漫な印象はぬぐえなかった。


原題 TOURNEE
製作年 2010年
製作国 仏
公開日 2011年9月24日

監督 マチュー・アマルリック
脚本 マチュー・アマルリック、ラファエル・ヴァルブリュンヌ
撮影 クリストフ・ボーカルヌ
美術 フレデリック・ブリュム
出演 マチュー・アマルリック、ミミ・ル・ムー、キトゥン・オン・ザ・キーズ、ダーティー・マティーニ、ジュリー・アトラス・ミュズ、イーヴィ・ラヴェル、ロッキー・ルレット

☆☆☆☆4
(サ)
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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2009年映画ベスト10
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<日本映画>
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