「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」東陽一

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人気漫画家の西原理恵子の元夫で、2007年に死去した戦場カメラマン・鴨志田穣さんの自伝的小説を映画化したもの。アルコール依存症ものである。

ベテラン職人、東陽一監督は若い頃観た『サード』が好きだった。永島敏行、森下愛子などが出ていた青春映画だ。緑魔子主演の『やさしいにっぽん人』がデビュー作だ。ドキュメンタリー的要素を取り入れたり、あまり奇をてらわない自然体の映画を撮る監督という印象がある。『絵の中のぼくの村』なんていう絵本作家・田島征三の子供時代の懐かしき夏を描いた映画もあった。

さてこの映画は、アルコール依存症の元戦場カメラマンの話だけれど、彼自身の苦悩と葛藤を描いたというよりも、元妻の西原理恵子と子供たちとの家族の物語だ。だからアルコール依存症を克服する苦しみとかはあまり描かれていない。さらっとしている。時々、さらっと幻想が見えてたりするカットが挿入されるが、あくまでもさらっとである。意味ありげだったり、禍々しかったりはしない。ラスト、元妻を演じる永作博美が海岸で、まもなく死んでいく彼(浅野忠信)の分身を見る場面がある。海辺で子供たちと戯れる彼と、その光景を丘の上で見つめつつ、去っていくもう一人の彼。それもさらっと出てくる。

「身体の中が悲しみでいっぱいで、悲しいんだかうれしいんだかわからなくなっちゃった」と永作博美が医者に言う場面が印象的に使われている。だからソファーで子供たちとくつろぐ彼に「なかなか死なないねぇ」なんて言ったりもする。

アルコール依存症とガンといういわゆる病気ものなのだけれど、観客を泣かせようとしていない映画なのがいい。アルコールに依存してどうしようもないダメ夫と元妻との距離感、そしてガンだとわかって死が間近に迫り、そんな彼の死を受け入れようとするその戸惑い。大袈裟に悲しむのではなく、ふと、玉ネギを切っている瞬間に溢れ出す涙。そんな描き方に好感が持てる。

人は感情を持て余す。自分で自分のことをコントロールなんて簡単に出来やしない。ましてや家族であっても、誰も他人のことはわからない。自分がなぜ酒を飲み続けるのか、なんて簡単に説明できたりはしない。アルコール依存症病棟の病人たちも、自分で自分のことを持て余している。そんなうまくいかなさを絶望感でも悲しみでもなく戸惑いのように、さらっと、ぽんと、そこに提示しているような映画だ。

製作年/国 2010年/日本
配給 ビターズ・エンド
監督: 東陽一
原作: 鴨志田穣 『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』
脚本: 東陽一
撮影: 釘宮慎治
美術: 磯見俊裕
編集: 東陽一
主題歌: 忌野清志郎 『誇り高く生きよう』
キャスト:浅野忠信、永作博美、市川実日子、利重剛、藤岡洋介、森くれあ、高田聖子、柊瑠美、北見敏之、螢雪次朗、光石研、香山美子

☆☆☆3
(ヨ)
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テーマ : TVで見た映画
ジャンル : 映画

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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