「ゴモラ」 マッテオ・ガローネ

ゴモラ

2008年・第61回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞。この映画が評価されたところは、その社会性だろう。イタリアのネオレアリスモの流れをくむドキュメンタリー的映画。ヴィットリオ・デ・シーカの『自転車泥棒』があり、ロベルト・ロッセリーニの『無防備都市』があり、ルキノ・ヴィスコンティの『揺れる大地』、フランチェスコ・ロージという監督もいた。社会のリアルな問題や現実を映画を通して描いてきたイタリア映画の伝統。

イタリアの高度資本主義と暴力組織の結びつき。グローバル資本主義が強いモノが勝ち残るシステムである以上、これは現代の縮図でもある。イタリア新興マフィア「カモッラ」の実態を描いたロベルト・サヴィアーノ著『死都ゴモラ』という原作に基づき、暴力組織の赤裸々な人間模様や抗争を描いている。イタリア南部ナポリを本拠にかつてのマフィアをはるかに凌駕する権力と経済力を持ち、ドラッグの売買、産業廃棄物の不法処理、オートクチュール・ファッションの製造、海外不動産への投資など金になることならなんでもやる男たち。刑務所のアマチュア劇団員や現場でスカウトした素人まで20名を超えるキャストで制作されたという。

かつての『ゴッド・ファーザー』で描かれたシシリー島のマフィアのような一族的ファミリーではなく、もっとドライな金のつながりの暴力組織だ。描かれ方も心理描写があるような映画的なドラマではなく、即時的なドキュメンタリーに近い撮り方だ。深度の浅い手持ちカメラでほとんどノーライトでの撮影。やや観ていると疲れてくるが、リアルなカメラワークだ。

5つのエピソードがそれぞれ進行しながら描かれていく。なかでも物語の軸となるのが、マルコとチーロという無鉄砲な少年たちだ。カモッラから武器を手に入れ、川辺で裸で銃を乱射するシーンが印象的だ。強者になりたいという若者たちの欲望。そして、カモッラのメンバーたちが住む巨大スラム化した集合住宅もなんだかリアルだ。子供たちが屋上のプールで遊び、結婚式も行なわれる生活圏と同じ場所で銃撃戦が日常的に行なわれる生と死の世界の共存。イタリアのオートクチュール・ファッション界の仕立て職人もカモッラの手で操られている。仕立て職人が中国人工場に指導を頼まれ出向くと、殺されそうになる。自ら仕立てたドレスをスカーレット・ヨハンソンが映画祭で着ているのをトラック運転手になってテレビで眺めるラストシーンがなんとも皮肉だ。産業廃棄物の不法投棄の話もいかにもありそうな話である。

徹底的な利潤追求と暴力が結びつき、あらゆる世界を支配しようとする組織カモッラ。それは弱肉強食のグローバル資本主義の図式そのままだ。圧倒的な臨場感とともにリアルで冷静にその社会の暗部を描いている手法にパワーを感じる。ただ、ややそのストレートさが面白みに欠ける気もした。


原題: Gomorra
製作国: 2008年イタリア映画
配給: 紀伊國屋書店、マーメイドフィルム

監督: マッテオ・ガローネ
製作: ドメニコ・プロカッチ
原作: ロベルト・サビアーノ
脚本: マルリツィオ・ブラウッチ、ウーゴ・キーティ、ジャンニ・ディ・グレゴリオ、マッシモ・ガウディオソ、マッテオ・ガローネ、ロベルト・サビアーノ
撮影: マルコ・オノラート
キャスト: トニ・セルビッロ、ジャンフェリーチェ・インパラート、マリア・ナツィオナーレ、サルバトーレ・カンタルーポ、ジージョ・モッラ、サルバトーレ・アブルツェーゼ、マルコ・マコール、チロ・ペトローネ、カルミネ・パテルノステル

☆☆☆☆4
(コ)
スポンサーサイト

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : 社会派

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
札幌でテレビの仕事をしている
オヤジです。
映画にまつわる雑文です。
2006年からの映画レビュー。
それから、本の感想を少し。


twitter 719hideyosi

最新記事
お気に入り度
テレビドラマ「カルテット」
映画あいうえお順
カテゴリ
映画ジャンル&☆ランク
映画監督別
アキ・カウリスマキ
アラン・レネ
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
アルフレッド・ヒッチコック
アンドレイ・タルコフスキー
イエジー・スコリモフスキ
イザベル・コイシェ
ウェス・アンダーソン
ウディ・アレン
ヴィム・ヴェンダース
エドワード・ヤン
エミール・クストリッツァ
エリック・ロメール
オーソン・ウェルズ
ガス・ヴァン・サント
ギジェルモ・アリアガ
クエンティン・タランティーノ
クリント・イーストウッド
グザヴィエ・ドラン
コーエン兄弟
サム・ペキンパー
シドニー・ルメット
ジム・ジャームッシュ
ジャック・ロジエ
ジャン=リュック・ゴダール
ジョン・カサヴェテス
タヴィアーニ兄弟
ダルデンヌ兄弟
テオ・アンゲロプロス
テリー・ギリアム
ニキータ・ミハルコフ
ニコラス・レイ
パトリス・ル・コント
ハワード・ホークス
ビリー・ワイルダー
フェデリコ・フェリーニ
ファティ・アキン
フランソワ・オゾン
フランソワ・トリュフォー
ペドロ・アルモドバル
ポール・トーマス・アンダーソン
マイケル・ウィンターボトム
ミヒャエル・ハネケ
ラース・フォン・トリアー
ロバート・アルトマン
ロベール・ブレッソン
ロマン・ポランスキー

青山真治
今村昌平
犬童一心
石井裕也
大森立嗣
小津安二郎
北野武
宮藤官九郎
熊切和嘉
神代辰巳
黒沢清
是枝裕和
鈴木清順
園子温
成瀬巳喜男
西川美和
濱口竜介
深田晃司
藤田敏八
前田司郎
三木聡
山下敦弘
吉田喜重
読書感想・作家別
月別アーカイブ
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
映画
189位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
レビュー
85位
アクセスランキングを見る>>
フリーエリア
最新コメント
最新トラックバック
映画ベスト10 2009~2016年
2016年ベスト10
<洋画>
    ダゲレオタイプの女
    マイ・ファニー・レディ
    キャロル
    シング・ストリート 未来へのうた
    リザとキツネと恋する死者たち
    グッバイ・サマー
    サウルの息子
    マジカル・ガール
    ブリッジ・オブ・スパイ
    手紙は憶えている
<日本映画>
    淵に立つ
    クリーピー 偽りの隣人
    海よりもまだ深く
    ふきげんな過去
    SCOOP!
    永い言い訳
    オーバー・フェンス
    ディストラクション・ベイビーズ
    葛城事件
    湯を沸かすほどに熱い愛
    次点この世界の片隅に


2015年ベスト10
<洋画>
    やさしい女
    さよなら人類
    さらば、愛の言葉よ
    毛皮にヴィーナス
    雪の轍
    愛して飲んで歌って
    サンドラの週末
    サイの季節
    インヒアレント・ヴァイス
    ソニはご機嫌ななめ

<日本映画>
    海街dairy
    岸辺の旅
    FOUJITA
    百円の恋
    この国の空


2014年ベスト10
<洋画>
    エレニの帰郷
    グランド・ブタペスト・ホテル
    罪の手ざわり
    ウルフ・オブ・ウォールストリート
    ジャージー・ボーイズ
    インサイド・ルーウィン・デイヴィス
    6才のボクが、大人になるまで。
    フランシス・ハ
    ウォールフラワー
    ある過去の行方

    <日本映画>
    そこのみにて光輝く
    ニシノユキヒコの恋と冒険
    紙の月
    Sventh Code
    私の男


      2013年映画ベスト5
<洋画>
    1、「愛、アムール」
    2、「ホーリー・モーターズ」
    3、「オンリー・ラバーズ・レフト・アライブ」
    4、「いとしきエブリデイ」
    5、「ムーンライズ・キングダム」
    ※番外「カリフォルニア・ドールズ」(1981年)

    <日本映画>
    1、「共喰い」
    2、「さよなら渓谷」
    3、「恋の渦」
    4、「リアル 完全なる首長竜の日」
    5、「Playback」(2012年)


    2012年映画ベスト10
<洋画>
    2、「少年と自転車」
    3、「Pina ピナ・バウシュ 躍り続けるいのち」
    4、「ライク・サムワン・イン・ラブ」
    5、「きっと ここが帰る場所」
    6、「ドライヴ」
    7、「風にそよぐ草」
    8、「恋のロンドン狂騒曲」
    9、「おとなのけんか」
    10、「別離」
    次点 「裏切りのサーカス」
番外
    「永遠の僕たち」
    「J・エドガー」
    「家族の庭」

    3、「演劇1&2」
    4、「夢売るふたり」
    5、「アウトレイジビヨンド」
    番外 「ヒミズ」


2011年映画ベスト10
    3,「ブルーバレンタイン」
    4,「愛する人」
    5,「クリスマス・ストーリー」
    6,「トゥルー・グリット」
    7,「SOMEWHERE」
    8,「さすらいの女神(ディーバ)たち」
    9,「エリックを探して」
    10,「シリアスマン」
    次点,「エッセンシャル・キリング」

    3,「あぜ道のダンディ」
    4,「マイ・バック・ページ」
    5,「冷たい熱帯魚」

    2010年映画ベスト10
    3、フローズン・リバー
    4、アンナと過ごした4日間(2008)
    5、Babble/バブル(2005)
    6、パリ20区、僕たちのクラス
    7、クレイジー・ハート
    8、ずっとあなたを愛してる
    9、千年の祈り
    10、シルビアのいる街で
    次点、闇の列車、光の旅

    3、川の底からこんにちは
    4、さんかく
    5、ノルウェイの森
    次点、乱暴と待機


2009年映画ベスト10
    3、リミッツ・オブ・コントロール
    4、あの日、欲望の大地で
    5、人生に乾杯!
    6、ウェディング・ベルを鳴らせ!
    7、チェンジリング
    8、ロルナの祈り
    9、レスラー
    10、夏時間の庭

<日本映画>
    1、ディア・ドクター
    2、空気人形
    3、ウルトラミラクルラブストーリー
    4、インスタント沼
    5、ノン子36歳(家事手伝い)
検索フォーム
ブックマーク
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
FC2カウンター